最新記事

太陽探査

太陽コロナに触れる探査機、熱で溶けない4つの理由:NASAが8月打ち上げへ

2018年7月24日(火)16時00分
高森郁哉

太陽表面から噴き出すセ氏100万度超のコロナに接触する NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben/

米航空宇宙局(NASA)は来月、太陽の大気圏に到達することを目指す探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」を打ち上げる。太陽表面から噴き出すセ氏100万度超のコロナに接触するという、史上初の偉業を達成できるかどうかが注目される。

太陽探査の目的

NASAは米国時間7月20日の記者会見で、パーカー・ソーラー・プローブの打ち上げが8月6日以降の同月前半になるとの見通しを示した

NASAは太陽探査の目的として、(1)太陽風が加速する謎を解明する(2)コロナが100万度超もの超高温になる理由を調査する(3)太陽のエネルギー粒子が加速する仕組みを明きらかにする、の3つを挙げている。

ミッションの概要

パーカー・ソーラー・プローブのサイズは1m×3m×2.3mで、打ち上げ時の重量は685kg。地球を飛び立ってから太陽の裏側を通って地球の公転軌道に戻る楕円軌道を、約7年かけて徐々に狭めながら計24周する。

探査機は太陽表面から約600万キロまで接近し、その際の速度は時速70万kmに到達。この接近距離は探査機史上最短で、速度も人工物として史上最速となる。また、このとき探査機表面の温度は1377度に達するという。

ミッションの概要


NASAが説明する4つの理由

100万度超にもなるコロナを通過しても探査機が溶けない理由として、NASAは動画を使って以下の4つを説明している。

・熱シールド:太陽光を反射する白色のシールド。材料は外側が耐熱性に優れた「黒鉛エポキシ」という炭素の結晶体で、内側は空気を97%含む炭素発泡体でできている。
・高性能の自律制御:探査機本体から突き出た「ソーラーリムセンサー」が、熱シールドの向きがずれた状態を検知することで、本体がシールドに隠れる向きになるよう自律的に姿勢制御する。
・冷却システム:内部に水を循環させるシステムを備え、太陽電池の部分で温められた水が、ラジエーター部分で冷却される。
・熱と温度の違い:温度は測定値であり、熱はエネルギーの移動を意味する。コロナを構成するプラズマ粒子は密に存在せずまばらなため、探査機はごく一部の粒子にしか接触せず、移動するエネルギーも限られる。

なぜ溶けないのか

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

香港大規模火災の死者83人に、鎮火は28日夜の見通

ワールド

プーチン氏、和平案「合意の基礎に」 ウ軍撤退なけれ

ワールド

ウクライナ、和平合意後も軍隊と安全保障の「保証」必

ビジネス

欧州外為市場=ドル週間で4カ月ぶり大幅安へ、米利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中