最新記事

SNS

「インスタ映え」に悩む若者たちの新展開 「いいね!」獲得はより複雑・高度に

2018年12月21日(金)20時40分
原田曜平(サイバーエージェント次世代生活研究所・所長) *東洋経済オンラインからの転載

背景にあるのは若者の複雑な心理

若者は「他人にどう思われているか」をとても気にしています。一方、インスタグラムは承認欲求・自己顕示欲を満たすものとして使われています。しかし、その気持ちの強さがあまりにもフォロワーにみえみえだと敬遠され、「いいね!」の数は減ってしまいます。

実際に都内大学生のEさんは「自慢しすぎた投稿にはいいね!しない」そうです。それは「インスタ映えを狙いすぎた投稿・キメキメで気取った投稿・自慢した投稿はウザい」「インスタ映えインスタ映えと言ってるやつはダサイ」という若者の新たなムードが生まれているからではないでしょうか。

大学生のFさんは「SNSを見てくれている知り合いに、裏で何を言われているか気になります」と語ってくれました。他人の目を気にして、嫌われないように慎重にインスタグラムを投稿していることがわかります。

SNSの投稿を見る際には、誰しも斜に構えがちです。だからこそ、着飾った非日常的な投稿は気にさわるのでしょう。

ブランド物・旅行・高い食べ物などを購入し、オシャレに見えるように配置にこだわり、さらに加工して、徹底的にインスタ映えさせる――。これはある程度お金や時間に余裕がある人にしかできないことです。そして、ダメな部分は見せないので、隙がありません。そのためお高くとまっている・手の届かない印象を与えてしまいます。身近な人がそのような投稿ばかりしていると、一部ですが、嫉妬を感じたり毒づいてしまう人も出てきます。

都内女子大生のGさんは「あまりにもブランド物や高級レストランばかり載せているのを見ると、もしかして見栄を張っているだけのセレブ気取り? パパ活?と思ってしまいます。何となくイラつくから『いいね!』しないです。こういった投稿を見て、女子会のネタにして盛り上がっています」と答えてくれました。

盛る、映えるを意識し尽くした投稿は、「高慢だ」「嫌みったらしい」「一般人のくせに気取っている」「お金持ちぶっている」「ナルシストでイタい」と批判的に思ってしまうようです。

一方、だからといって気取りすぎない日常的な投稿は「汚い」「ダサい」と思われます。それは「いいね!」したい投稿ではないのです。そのため、非日常・日常のどちらかに振り切りすぎない「程良い」投稿が好まれているのでしょう。

自慢の仕方が変わっている

SNSによって友達の数は格段に以前より増えたし、そのつながっている多くの友達に日常的に何かをアピールする場もできた。一方、あまりに直接的に自慢すると、それだけ多くの人に批判をされたり、うざがられる機会も格段に以前より増えた......。

こうした矛盾や葛藤の渦中にあるのが今の若者たちと言えます。2015年に筆者らは『間接自慢する若者たち』という書籍を出しました。この本はこうした矛盾に置かれるようになった今の若者たちが、直接的・ストレートな表現ではなく、間接的・婉曲的な表現を駆使し、自慢をするテクニックを身につけ始めた、という内容のものでした。

それから数年経ち、若者たちの間接自慢が、インスタ上でも見られるようになり、それが"現時点"では「デイリージェニック」ということなのだと思います。"現時点"と言ったのは、この若者たちの間接自慢の手法は、とても変化のスピードが速いからです。

読者の皆様もぜひインスタ上での若者たちのデイリージェニックに注目して、今後の変化も追っていただきたいと思います。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのソマリランド国家承認、アフリカ・アラブ

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中