最新記事

イラン

モサドが極秘倉庫を急襲、イラン核開発「衝撃の真実」が判明

The Secret Revealed

2018年11月26日(月)18時00分
マイケル・ハーシュ

モサドは1月末、イランの首都テヘランにある極秘倉庫を急襲してこの資料を盗み出した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は4月末、大掛かりな会見を開き、「核開発計画が存在したことはないというイランの主張は、大嘘だったことが証明された」として、資料の概要を発表した。

これに対してイランのアッバス・アラグチ外務次官は、ネタニヤフの会見は「トランプに(核合意離脱を)促すための見世物だ。核合意を葬るためにトランプと共謀した可能性もある」と非難した。トランプが核合意からの離脱を発表したのは、その数日後のことだ。

オルブライトらが作成した極秘文書の分析報告書案は、イランのハッサン・ロウハニ大統領が、「90年代末〜2000年代初頭の核開発計画の中心的存在だったとしている。当時ロウハニは国家安全保障担当顧問だった。「彼が核開発を支持しなくなった証拠を発見するのは難しい」

ネタニヤフの会見は「イランの嘘」をアピールすることに重点を置いていたが、オルブライトらの分析は、イランが「2003年末までに、どうやって包括的な核開発のインフラを整備できたのか」に焦点を当てている。なにしろイランは、「IAEAが2015年末に指摘した全面的な技術力と設備」を、既に90年代末には開発していたというのだ。

同時に報告書案は、当時の計画(目標は10キロトン級の核弾頭5発の製造だった)が、現在どの程度残っているかは不明であることを指摘している。「当時の機器や物質の残りが今どこにあるかは、より緊急に答えを見つける必要がある問題だ」

核開発能力を温存か?

極秘資料からは、イランが2015年の核合意を遵守しているかどうかを知ることはできない。ただ、トランプがアメリカの離脱を発表するまでは、イラン政府は合意遵守に協力的だったというのが多くの専門家の見方だ。

オバマ政権で、イランの核合意遵守状況を報告する作業に携わった軍備管理不拡散センターのアレクサンドラ・ベル上級政策部長は、たとえ極秘資料の内容が正しくて、イラン政府が過去に嘘をついていたことが本当だったとしても、現在のイランの姿勢は現在の合意遵守状況によって評価するべきだと語る。

「メディアの報道に基づく監視は避けるべきだ」と、ベルは言う。「どんな合意でもそうだが、問題が生じた場合は、適切なルートを通じて処理するべきだ。この場合、核合意の当事国が対処するべきことだ」

トランプ政権も離脱前は、2度にわたりイランが核合意を遵守しているとの調査結果を発表している。IAEAの場合は15回だ。「核合意は機能している」と、ベルは語る。

それでも、20年前の核開発活動を示す極秘資料が発見されたことで、イランは核開発能力を温存しているのではないかという疑念が、一部の政府とIAEAの間で浮上したのは事実だ。核合意では、イランは兵器級核燃料の濃縮能力と再処理能力を基本的に放棄し、IAEAの厳格な査察を受けることが義務付けられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻

ワールド

米、ウクライナの長距離ミサイル使用を制限 ロシア国

ワールド

米テキサス州議会、上院でも選挙区割り変更可決 共和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    【独占】高橋一生が「台湾有事」題材のドラマ『零日…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中