最新記事

アメリカ政治

米中間選挙の民意を出口調査から読み解く

The GOP Is Losing the Middle

2018年11月17日(土)15時15分
ウィリアム・サレタン

移民への強硬姿勢は空振り

アメリカを目指す中米からの移民集団に強硬姿勢を示したトランプは、重要な州における共和党の勝利は、彼の政策への支持を示していると主張している。逆に一部の左派は、共和党の勝利を偏見に基づく怒りが噴出した結果とみるだろう。だが、数字はこの結論を裏付けていない。トランプの移民政策について投票者の46%が「厳しい」と答え、「もっと厳しくすべき」と答えた人はわずか17%だった。

メキシコ国境の壁建設に反対の人は52%で、賛成の47%を上回った。アメリカに住む不法移民は強制送還すべきか、合法的な地位を申請する機会を与えるべきかという質問には、69%が合法的な地位を選んだ。また移民はアメリカにとって「どちらかといえば有害」とする回答は38%で、「どちらかと言えば有益」は59%だった。

共和党支持者「社会は公平」

回答者の大半は、白人至上主義者や、嘘の情報で有権者を扇動する共和党の政治家に不支持を表明。36%は不正投票が行われることへの懸念を、53%は投票に際し自分が不当に操られることへの懸念を示した。いずれの調査でも40%以上が「社会は少数民族より白人を優遇している」と答え、少数民族のほうが優遇されているとする人は20%未満だった。

一方で、約3分の1が「社会はどの人種もえこひいきしていない」と答え、こう回答した人々は2倍以上の割合で共和党に投票した。つまり、共和党支持者は「今のアメリカは十分に公平な社会」だと信じているが、必ずしも少数民族への憎悪を抱いてはいない。

経済に対する評価は二分

2つの出口調査では回答者の3分の2が景気は良い、または極めて良いと答え、そうした人の多くは共和党に投票した。しかし家計に関する質問では、大半が「良くも悪くもなっていない」か「徐々に悪化している」と答え、そうした人の多くは民主党に投票していた。

社会主義化する有権者

さまざまな問題で分断しているアメリカ社会だが、賛否は拮抗している。政府がもっと大きな役割を「果たすべき」とする人と、「その必要はない」とする人は、いずれも49%。オバマ前政権による医療保険制度改革については、52%が一部廃止または全面廃止を支持、維持または拡張すべきとする回答は47%だった。

しかし質問の仕方を変えると、アメリカの有権者は意外と社会主義的だった。「政府が医療保険の提供に責任を持つべき」だとする見解には、58%が賛成していた。「今の経済制度は富裕層を優遇している」と答えた人は70%、「貧困層への支援が足りない」は63%だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フランス、米を非難 ブルトン元欧州委員へのビザ発給

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡・20人負傷 ガ

ワールド

英BP、カストロール株式65%を投資会社に売却へ 

ワールド

アングル:トランプ大統領がグリーンランドを欲しがる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中