最新記事

テクノロジー

中国の核融合実験装置(人工太陽)で太陽の約7倍にあたる1億度を達成

2018年11月20日(火)16時15分
松岡由希子

中国の核融合実験装置「EAST(東方超環)」で1億度を達成  CCTV-Youtube

<中国科学院合肥物質科学研究院は独自に設計開発した核融合実験装置「EAST(東方超環)」で高温プラズマ中心の電子温度が初めて摂氏1億度を達したことを明らかにした>

夢のエネルギー、核融合発電

ウランやプルトニウムといった重原子の原子核分裂反応を利用する従来の原子力発電に対して、水素やヘリウムのような軽原子の核融合反応でエネルギーを発生させる核融合発電は、ほぼ無限に利用できる"クリーンエネルギー"として有望なエネルギー技術だ。

核融合反応は、太陽などの恒星が光輝き、エネルギーを放射する原理に倣ったもので、海中に豊富に存在する重水素やリチウムを利用するため資源の枯渇リスクがなく、発電過程で二酸化炭素を発生させない。また、核分裂反応をベースとする従来の原子力発電と異なり、高レベル放射性廃棄物が発生することもない。

恒星では巨大な重力によって核融合反応が維持されているが、地球で核融合反応させるためには超高温かつ超高圧な環境を人工的につくりだす必要がある。加熱装置を用いて摂氏1億度以上の高温プラズマをつくり、ここで重水素とリチウムから生成した三重水素(トリチウム)という2つの原子核を毎秒1000キロメートル以上の高速で衝突させて核融合反応を起こすという仕組みだ。

また、核融合反応を維持させるためには、重水素や三重水素の原子核を長時間にわたって高密度で一定の空間に閉じ込めておかねばならず、現時点では、磁気を使った閉じ込め方式が主流となっている。

「中国がトカマク型の核融合発電に向けて大きく前進」

中国東部の安徽省合肥市にある中国科学院合肥物質科学研究院は、2018年11月13日、独自に設計開発した核融合実験装置「EAST(東方超環)」で高温プラズマ中心の電子温度が初めて摂氏1億度を達したことを明らかにした。これは、摂氏1500万度の太陽の中心部の温度のおよそ7倍にあたる。


磁気閉じ込め方式のひとつ「トカマク型」を採用した、高さ11メートル、直径8メートル、重さ400トンの「EAST」では、10メガワットを超える加熱出力を実現し、プラズマのエネルギー貯蔵を300キロジュールまで上昇させることにも成功した。中国科学院は、これらの成果について「中国がトカマク型の核融合発電に向けて大きく前進していることを示すものだ」と評価している。

2018年6月には、独マックス・プランク研究所の核融合実験装置「ヴェンデルシュタイン7-X」でも、ヘリウムのイオン温度を4000万度まで加熱することに成功しているが、「EAST」の記録はこれを大きく上回り、地球上での核融合反応に必要な温度レベルに達したものであることから、核融合発電の実用化に向けた大きな一歩として注目されている。

MAGAZINE

特集:香港の出口

2019-8・27号(8/20発売)

拡大する香港デモは第2の天安門事件に? 中国「軍事介入」の可能性とリスク

人気ランキング

  • 1

    日韓対立の影響は?韓国経済に打撃大きく、日本経済にもマイナス 日韓関係の回復を強く望む

  • 2

    韓国人はなぜデモがそんなに好きなのか

  • 3

    乳がん細胞を脂肪細胞に変えることに成功:バーゼル大学の研究

  • 4

    寄生虫に乗っ取られた「ゾンビ・カタツムリ」がSNSで…

  • 5

    日本の重要性を見失った韓国

  • 6

    韓国で日本ボイコットに反旗? 日本文化めぐり分断…

  • 7

    日本人が知らない監視社会のプラス面──『幸福な監視…

  • 8

    韓国航空業界に再編の荒波 アシアナは投資ファンド…

  • 9

    トランプはなぜ極寒のグリーンランドが欲しいのか

  • 10

    世界が発想に驚いた日本の「ロボット尻尾」、使い道…

  • 1

    寄生虫に乗っ取られた「ゾンビ・カタツムリ」がSNSで話題に

  • 2

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいついで感染

  • 3

    世界が発想に驚いた日本の「ロボット尻尾」、使い道は?

  • 4

    日本の重要性を見失った韓国

  • 5

    異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開

  • 6

    若年層の頭蓋骨にツノ状の隆起ができていた......そ…

  • 7

    犯人の容姿への嘲笑に警告 9万件のコメントを集めた…

  • 8

    世界が知る「香港」は終わった

  • 9

    未成年性的虐待の被告の大富豪が拘置所で怪死、米メ…

  • 10

    金正恩が韓国・文在寅政権を猛非難「朝鮮半島情勢緊…

  • 1

    寄生虫に乗っ取られた「ゾンビ・カタツムリ」がSNSで話題に

  • 2

    日本の重要性を見失った韓国

  • 3

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 4

    異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開

  • 5

    韓国で日本ボイコットに反旗? 日本文化めぐり分断…

  • 6

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいつ…

  • 7

    「韓国の反論は誤解だらけ」

  • 8

    デーブ・スペクター「吉本」「日本の芸能事務所」「…

  • 9

    「韓国に致命的な結果もたらす」日韓の安保対立でア…

  • 10

    アメリカの衛星が捉えた金正恩「深刻な事態」の証拠…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月