最新記事

自動車

深まる日産とルノーの溝 かじ取り役不在で3社連合の前途多難

2018年11月23日(金)18時04分

「より対等な関係」を模索したい日産

検討を続けてきた日産とルノーの資本関係見直しも、さらに混迷を極めそうだ。現在の資本構成は、ルノーが日産に43.4%、日産はルノーに15%を出資する。ただ、ルノーは日産に対し議決権を持つが、日産はルノーに対して議決権を行使できないといういびつなものだ。

両社の資本関係は、1999年に経営危機に陥った日産をルノーが救済したことに始まるが、現在は立場が逆転し、ルノーを日産が支えている。ルノーの2017年度の純利益の約半分は、日産の業績が寄与する持分法投資利益からきている。

約20年もトップに君臨しながら、ゴーン容疑者は長年続いていた一連の完成検査不正で批判の矢面に立たず、役員報酬も自ら決めていた。3社間のあらゆる機能の共通化でも、ゴーン容疑者の息のかかったルノー出身者が責任者を務めるなど「役員選出も彼の思い通りだった」と三菱自関係者は振り返る。

別の日産幹部は「それぞれがより独立した形で、ウィン・ウィンの関係という原点に戻るべきでは」と指摘。ルノーが日産に対する出資比率を下げるなど「より対等な関係」を模索していくことを示唆した。

日産は15年、経営の独立性を担保する合意をルノーからとりつけているが、日産が15%から25%までルノーへの出資比率を高めれば、日本の会社法によりルノーが持つ日産株の議決権は消える。

切っても切れない関係

日産とルノーの両社はこれまで車種ごとの設計・部品の共通化、14年4月からは研究・開発、生産・物流、購買、人事の4機能の統合を進めてきた。100年に1度といわれる変革期を乗り越えるため、電気自動車や自動運転などの次世代技術でも共通化を進めており、3社は今や切っても切れない関係にある。

日産は22日、ルノーとのパートナーシップは不変であることも確認したと表明した。自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは、日産が単独で生きていくのは厳しいとしつつ、連合の運営や資本関係の見直しなどで「相当もめるのでは」とみている。また、フランス政府の思惑から日産が離れていく場合、フランス政府が「何かしら手を打ってくるのでは」と予測する。

ゴーン容疑者は自らの晩節を汚しただけでなく、3社連合の未来にも大きな影を落とした。同業他社の幹部は、3社連合に漂う緊張関係を他山の石とし、こう指摘している。「資本を出し合うことが連合ではない。気持ちが一致していなければ何をやってもダメだ」――。

(白木真紀 取材強力:山崎牧子、久保信博、Daniel Leussink、Laurence Frost  編集:田巻一彦)

[横浜市/パリ 23日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ユーロ圏総合PMI、10月は17カ月ぶり高水準 サ

ワールド

フランス社会党、週明けに内閣不信任案提出も 富裕層

ワールド

景気動向指数改定、一致は2カ月連続減、「下げ止まり

ワールド

英10月PMI、サービス・製造とも改善 新規受注回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 10
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中