最新記事

中東

サウジvsトルコ、その対立の根源

A Historic Islamic Rift

2018年10月27日(土)16時00分
ムスタファ・アクヨル(米ケイトー研究所上級研究員)

こうした措置は、19世紀半ばのオスマン帝国が採用した大改革「タンジマート」の一環とされる。この改革を経て、オスマン帝国は民選議会を持つ立憲君主制の国家に変身した。それが世俗国家としての近代トルコの建国につながった。イスラム法に代わって世俗法が導入され、男女の同権が宣言された。

もちろん、今のトルコの民主主義は極めて残念な状況にある。大統領となったレジェップ・タイップ・エルドアンは民主主義にも世俗主義にも背を向け、強権支配を強めている。

近代トルコの選んだ「世俗的なイスラム国家」の道は、筆者を含め、多くのイスラム教徒に希望を与えた。それはイスラムと民主主義の共存を実現するものにみえた。エルドアンも、当初はそれを支持していたはずだ。

しかしこの5年間でエルドアンは変身し、トルコはジャーナリストを投獄し、反政府派を弾圧し、憎悪とパラノイアが支配する個人崇拝の「エルドアン教」の国になった。

それでも、やはりエルドアンが掲げているのはトルコバージョンのイスラムだ。つまりサウジアラビアの支配層に比べたら、同じスンニ派でもずっと穏健で、現代的だ。そしてこの信仰上の違いゆえに、トルコとサウジアラビアは宿命的に対立する。

まずはイランとの関係だ。サウジアラビアは、シーア派のイランに対するスンニ派陣営の盟主を自任しており、シーア派へのワッハーブ主義に根差した深い憎悪を抱いている。

この好戦的な姿勢は、イランを孤立させたいアメリカ政府とイスラエルのタカ派には魅力的かもしれない。だが、それは地域の無益な宗派対立を激化させる。いい例がアラビア半島南部のイエメンにおける内戦だ。

対照的にトルコは、シリア内戦に関して何年もイランと対立してきたというのに、イランを敵視していない。「私が信ずるのはシーア派でもスンニ派でもない。イスラムの教えだ」とエルドアンは語っている。

宗派対立の拡大を防ぐには適切な立ち位置だ。イランの影響力に対抗する最善の策は(脅しや攻撃ではなく)外交だと、エルドアンは考えている。

宗教より政治的な対立

第2の対立点は、エジプトのスンニ派イスラム組織「ムスリム同胞団」との距離感にある。サウジアラビアはムスリム同胞団をテロ組織と非難し、13年にムスリム同胞団を主体とする政権を倒したエジプトの軍事クーデターを支援した。一方のトルコはクーデターを非難し、ムスリム同胞団を擁護している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PPI、12月は前月比0.5%上昇 5カ月ぶりの

ワールド

南ア・イスラエル、外交官を相互追放 ガザ巡る対立激

ワールド

FRBの利下げ見送りは失策、ウォーシュ氏は議長に適

ワールド

元CNN司会者が逮捕、ミネソタ州教会でのデモ巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 7
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 8
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中