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ウイグル弾圧の「刑務所国家」中国で大儲けする監視カメラメーカー

CHINA’S GROWING SURVEILLANCE INDUSTRY

2018年10月25日(木)19時10分
チャールズ・ロレット(ジャーナリスト)

ハイクビジョンとダーファは新疆だけでなく、国外でも高い関心を集めている。それもセキュリティー業界だけでなく、金融業界からだ。16年12月に香港と深圳の証券取引所が株式の相互取引を開始して以来、ハイクビジョンの株価は55%、ダーファの株価は約70%上昇した。「外国人は(ハイクビジョン株を)いくら買っても買い足りない」と、ブルームバーグは報じた。

こうした外国人投資家には、バンガードやJPモルガンといった大手資産運用会社が提供する投資ファンドが含まれる。ハイクビジョンとダーファは最近、新興国の株式市場の指標となるMSCI新興国株指数の構成銘柄に加えられた。このためファンドマネジャーらが、担当ファンドに両社株を組み入れる(あるいは投資比重を高める)傾向は拡大する一方だ。

欧米サプライヤーも「共犯」

ほとんどの投資家は、ハイクビジョンとダーファの株価が右肩上がりなのは、力強い市場環境のおかげと考えている。ただ、両社が新疆の監視システム強化に関与していることは、投資家の間でもよく知られている。ドイツ銀行は調査リポートで、ダーファを「買い」推奨にした最大の理由は、新疆の6億8600万ドルの監視プロジェクトを受注したことと明記している。

国際NGOフリーダム・ハウスの上級アナリストであるサラ・クックは、欧米の投資家が投資ファンドを通じて、知らず知らずのうちに新疆の監視強化の片棒を担いでいる危険性を指摘する。こうした「倫理的リスク」は中国のテクノロジー企業に投資する以上避けられないが、新疆の場合はレベルが違う。「いかなる形でも、(新疆の)監視強化に加担することは許されない」と、クックは言う。

ダーファとハイクビジョンは、人工知能(AI)の開発協力という形でも欧米諸国とつながっている。アメリカの半導体大手インテルとエヌビディアは、AIを駆使したダーファの顔検知・認識ネットワークカメラ「ディープセンス」の部品を供給している。ディープセンスは10万人の顔をリアルタイムに照合可能とされる。

アメリカのテクノロジー企業は昔から、中国の監視システム構築を間接的に助けてきた。シスコシステムズは11年、重慶市の監視カメラプロジェクトの要となるネットワーク装置をハイクビジョンに供給した。ただしシスコの広報担当者は、中国で標準的な「市販の」ネットワーク通信商品を供給したにすぎないと言う。「特別な場所を除けば、中国では監視カメラや監視管理ソフトウエアを販売することや、検閲用に製品を特別仕様にすること」が禁止されているというのだ。

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