最新記事

東南アジア

インドネシアでキリスト教の教会を突然閉鎖 大統領選控え宗教問題顕在化の恐れ

2018年10月1日(月)06時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

行政当局の係官が教会を封鎖した Hiburan HERO / YouTube

<多文化主義を標榜するインドネシアだが、来春投票を迎える大統領選が始まってからは圧倒的多数のイスラム教を優先するような事案が発生している>

インドネシア・スマトラ島のジャンビ州で9月27日、キリスト教プロテスタントのメソジスト教会が地方行政機関によって閉鎖に追い込まれた。周辺の非キリスト教徒住民からの要求に基づく処置といわれ、同教会の信者らはショックを受けている。

インドネシアは2019年4月の大統領選挙に向けて9月23日から約7カ月という長期間の選挙運動が正式にスタートしたばかり。選挙の争点に一つである宗教問題が早くも顕在化したもので、今後インドネシアで「宗教が問題化する」のは確実との懸念が高まっている。

ジャンビ州のコタバル市リンカル・バラット通りにあるメソジスト教会が9月27日、地元行政当局の係官によって封鎖され「閉鎖」に追い込まれた。今後この教会で宗教行事、集会などを行うことが禁止された。

同教会の信者団体関係者は「ここで18年間祈りを捧げてきた。なぜ突然の閉鎖なのかわからずショックを受けている」と地元メディアに話した。

当局「無許可施設と周辺住民が苦情」

教会を封鎖した地元行政当局によると、同教会は宗教施設としての許可を得ておらず、長年無許可施設としてキリスト教の宗教活動が行われていたという。

そこに「周辺住民からの無許可施設であるとの苦情が高まっていた」ことがこのタイミングでの封鎖と説明しているという。

だが教会関係者によると、同教会所属のキリスト教徒の住民は周辺のイスラム教徒住民と特に問題も混乱もこれまでなく、「仲良くやってきた。地域の住民の行事にも積極的に参加して良好な関係を築いていきた」として突然の強制措置に不満と戸惑いを表している。

コタバル市には同教会を含めて3か所の教会があるがいずれの教会に対しても周辺住民だとするイスラム教徒が閉鎖を求める運動が起きており、9月27日の封鎖前には「3教会の閉鎖を求める1000人集会をモスク(イスラム教の宗教施設)で開催する」と呼びかける文書が配布されていたという。


行政当局の係官が教会を封鎖したようす Hiburan HERO / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中