最新記事

核軍拡

ロシアのミサイル開発で、NATO軍事行動も辞さず

U.S. Threatens to ‘Take Out’ Russia’s New Missiles

2018年10月3日(水)18時44分
トム・オコーナー

2017年の演習で発射されたロシアの核弾頭搭載可能な単距離弾道ミサイル「イスカンデル」。9M729はその発展形といわれる。Russian Ministry of Defense

<新たな核軍拡競争の始まりか? 欧米に到達可能なロシアの新型中距離核ミサイル「全廃しなければ排除する」>

NATO(北大西洋条約機構)米代表部のケイ・ベイリー・ハッチソン大使は、欧州の加盟国を攻撃可能なロシアの新型ミサイルシステムに対して、アメリカは軍事行動を起こす用意があると警告した。

ハッチソンは記者団に対し、ロシアが開発を進めている地上発射型の核搭載可能なノバトル9M729ミサイル(NATOの呼称ではSSC-X-8)は、1987年にアメリカとソ連が締結した中距離核戦力(INF)全廃条約の禁止対象あたると述べた。

ハッチソンがロシアに冷戦時代の合意を遵守するよう要請したのは、ジェームズ・マティス米国防長官がベルギー・ブリュッセルのNATO本部で10月2~3日の両日に行われるNATO国防相会議に参加する前日だった。

「今こそロシアは交渉のテーブルにつき、条約違反を止めるべきだ」と、ハッチソンはブリュッセルのNATO本部で記者団に語った。

この欧米に届くこのミサイルが「使用可能になった」とすれば、アメリカは「排除措置を検討することになる」と述べた。

アメリカは2014年以降、射程500~5500キロの地上発射型ミサイルの製造を禁じるINF条約に違反していると、ロシアを非難している。

軍事的選択肢の検討も

この条約に署名した旧ソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフは、ドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は新たな軍拡競争を起こす前に、問題を解決しなければならないと警告した。だが、ロシアはINF条約違反を否定し、欧州全体にミサイルを配備しているアメリカこそ条約に違反していると主張している。

9M729についてはあまり知られていないが、ロシアが西側との国境地域に配備を進めている短距離弾道ミサイル「イスカンデル」と同じ発射装置を使用できると考えられている。

NATOはロシアに隣接するエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国およびポーランドで、ロシアの侵略に対する防衛を強化するための多国籍戦闘群を設立した。

ロシアが2014年にウクライナの政情不安に乗じてクリミア半島を占領して以降、NATOとの関係は悪化している。そして双方とも、軍備を強化し、即時に戦闘態勢をとるための演習を重ねてきた。

ところがトランプはNATOを公然と「タダ乗り」批判。加盟国に対し、より多くの資金負担を要求している。今のNATOがロシアの攻撃に対抗できるのか、不安視する専門家も多い。

(翻訳:栗原紀子)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=

ビジネス

ECBの政策「良好な状態」=オランダ・アイルランド

ビジネス

米個人所得、年末商戦前にインフレが伸びを圧迫=調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中