最新記事

アメリカ経済

米株は大幅続落、9年半続いた強気相場の終焉か?

Dow Falls 800 Points: Is the Bull Market Ending?

2018年10月12日(金)16時16分
ニコール・グッドカインド

またも「オクトーバー・エフェクト」を発揮した10月11日の米株式市場 Brendan McDermid-REUTERS

<株高を自身の手柄にしてきたトランプ大統領は、中国との関係悪化は株価に影響しないと思っているようだが>

10月は、金融市場が1年で最も恐れる月だ。1907年の金融恐慌、1929年のウォール街大暴落、アメリカが歴史的な株価暴落に見舞われた1987年のブラックマンデー。これらはすべて、いわゆる「オクトーバー・エフェクト」(10月効果)が原因で起きた。10月に株価が大きく下落しやすい理由や、オクトーバー・エフェクトの真偽ははっきりしないが、今年はまた、その名に恥じない恐怖を市場にもたらしてくれた。

10月10日の米株式市場では、大企業で構成するダウ工業株30種平均が800ドル超下落し、今月に入って初めて2万6000ドル台を割り込んだ。翌11日も546ドル下落して、2万5052ドル83セントで取引を終了。7月23日以来、約2カ月半ぶりの安値だ。

ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数も続落し、11日に前日比92.989ポイント安の7329.061と、5月8日以来約5カ月ぶりの安値で取引を終えた。

米長期金利の指標である米10年物国債の利回りは、10月3日に2011年以来7年ぶりの高水準を付け、投資家は神経質になっていた。金利上昇は米経済の力強さを示す健全な動きに見えるが、投資資金が株から米国債に流出すれば株価にはマイナスだ。しかし9日は債券市場からも資金が流出し、アナリストを不安にさせた。「投資家が『安全資産』からさえ逃避したのなら、これまでにない大変化だ」と、米ブリークリー・アドバイザリー・グループのピーター・ブックバー最高投資責任者(CIO)は米CNBCに語った。

今回の株価急落をきっかけに、9年半に及ぶ強気相場が終焉を迎えるのではないかと懸念されるなか、ホワイトハウスは10日、米経済は「極めて堅調だ」と主張した。

ホワイトハウスの関係者は10日、米CNBCに対し、トランプは株価急落について説明を受けているとしたうえで、次のように語った。「強気相場が調整局面に入っている。おそらく健全な動きで、過ぎ去るだろう。米経済は依然として力強い」

高級ブランドに売り

トランプはかねてから、株高を自分の実績だと自画自賛してきた。

「株で儲けたり、401k(確定拠出年金)の給付額が期待より多かった皆さん、もっと良いニュースがあるぞ!」と、トランプは今年8月にツイッターに投稿した。10月3日のツイッターには、こう書いた。「私が大統領に就任して以降、株式市場は史上最高値を102回更新した。就任から2年も経たないうちに、歴代政権のなかで断トツの記録を打ち立てた」「貿易と武器売却の取引がまとまるにつれて、株価はさらに上昇する可能性がある」

もしその株高が終わって自分の実績でなかったことがわかったらトランプは何をするのだろうか。

ホワイトハウスの見方に賛成のアナリストもいる。「株価急落は健全な動きだ」と、米資産管理会社シーラス・ウェルス・マネジメントのジョー・ハイダー会長は米CNNに語った。「株価は2009年3月以降、10年近くノンストップで上昇傾向を続けてきたのだから、必要な下げだった」

今のところトランプは、利上げで好調な経済に水を差すFRBを「狂っている」と批判している。だが12日には、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン株の急落から高級ブランド銘柄に売りが広がった。海外旅行から帰国する中国人の土産物に申告していないヴィトンのバッグなどが入っていないか、中国税関が取り締まりを強化していることがわかったからだ。

このニュースが、トランプが仕掛ける米中貿易戦争で中国の消費が減るのではないか、という市場の不安を直撃した。株高の立役者どころか下落の責任者である可能性もある。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中