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第9の惑星の存在を示唆!? 太陽系の端を公転する新たな準惑星が発見される

2018年10月5日(金)18時30分
松岡由希子

発見された太陽系外縁天体「2015 TG387」(通称ゴブリン)  Illustration by Roberto Molar Candanosa and Scott Sheppard/Courtesy of Carnegie Institution for Science

<太陽から遠く離れた軌道上を公転する準惑星「2015 TG387」が発見された。この軌道によって、太陽系の未知の第9番目の惑星「プラネット・ナイン」の存在をさらに裏付けることになった>

太陽系では、現在、地球を含む8つの惑星が確認されているが、その外縁に"第9番目"の惑星、すなわち「プラネット・ナイン」が存在するとの説が唱えられてきた。そして、このほど、この説を裏付ける可能性のある新たな物体が、冥王星のはるか先で発見された。

太陽系外縁天体「2015 TG387」(通称ゴブリン)の発見

国際天文学連合(IAU)の小惑星センター(MPC)は、2018年10月2日、「2015 TG387(通称ゴブリン)」と呼ばれる準惑星が米カーネギー研究所のスコット・シェパード博士らの研究チームによって発見されたことを明らかにした。

「2015 TG387」は、直径300kmほどの天体で、太陽と冥王星との距離のおよそ2.5倍にあたる80AU(天文単位、80AUは約120億キロメートルに相当)の位置にあり、近日点(軌道上で太陽に最接近する位置)でも太陽と65AU以上離れている。

matuoka1005a01.jpg太陽と冥王星との距離のおよそ2.5倍 CARNEGIE INSTITUTION FOR SCIENCE.

matuoka1400.jpgCARNEGIE INSTITUTION FOR SCIENCE.

近日点ベースでの太陽との距離は、太陽系外縁天体の「2012 VP113」や「セドナ(90377 Sedna)」に次いで三番目の長さだが、その軌道の半長軸はこれらの太陽系外縁天体よりも大きいため、太陽との距離は最長3400AUで、海王星や木星といった太陽系の巨大な惑星から重力の作用を受けるほど近づくことはない。

「2015 TG387」や「2012 VP113」、「セドナ」のような太陽系外縁天体を研究する意義について、シェパード博士は「太陽系の端で何が起こっているのか理解するうえで大いに手がかりとなる」と述べている。

初めて観測したのはハワイの「すばる望遠鏡」

細長い軌道に沿って4万年の公転周期で太陽の周りを巡る「2015 TG387」は、2015年以降、太陽に最接近していることから、地球からの観測に成功した。

「2015 TG387」を2015年10月に初めて観測したのは、米ハワイ島マウナ・ケア山山頂の国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡で、ハロウィンにちなんで「ゴブリン」と名付けられた。

その後、2018年にかけて、米アリゾナ州や南米チリのラス・カンパーナス天文台でフォローアップ観測が行われてきた。しかし、「2015 TG387」のように太陽から遠く離れた準惑星を地球から観測するのは一般に困難であり、地球から「2015 TG387」を観測できるのは、その公転周期うちのわずか1%程度にすぎない。

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