最新記事

中国

習近平の「自力更生」は「中国製造2025」を達成することを指す

2018年10月24日(水)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

10月23日、「港珠澳大橋」開通を祝う習近平国家主席  Aly Song-REUTERS

習近平が最近よく言う「自力更生」は、決して文革時の毛沢東返りではなく、「中国製造2025」によりコア技術の自給自足達成を指している。「中国製造2025」を見なければ中国も米中関係も日中関係も見えない。

「中国製造2025」に対する鮮明なメッセージ──新華網

その証拠に、2018年5月8日の中国政府の通信社「新華社」電子版「新華網」の報道を見てみよう。「"中国製造2025":困難に遭い、自ら強くなる」というタイトルで「中国製造2025」と「自力更生」の関係が書いてある。文字だけでなく写真に大きく「中国製造2025」とあるので、一目瞭然だろう。なお、中国語では「製造」は「制造」と書く。

小見出しには「2018年は絶対に普通ではない年になる!」とあり、冒頭に、おおむね以下のような趣旨のことが書いてある。

――いまわれわれは国家戦略「中国製造2025」を推進しており、改革開放40周年を迎えようとしている。ある国が、わが国に高関税をかけて、わが国のハイテク製品輸出に徹底的な打撃を与えようとしている。どこまでもつきまとう執拗な封鎖を通して、われわれは「困難から抜け出すには、ただ一つ、自力更生以外にない」ということを知らなければならない!

ここにある「ある国」とは、言うまでもなく「アメリカ」のことである。

アメリカが中国のハイテク製品に高関税をかけ、ハイテク製品製造のためのコア技術であるアメリカ製半導体の対中輸出に規制を掛けていることに対して、それなら「自力更生」以外にないと言っているのである。

この報道一つを見ただけでも、「自力更生」とは「中国製造2025」を達成して、中国のハイテク産業のコア技術に関する自給自足を指していることが歴然としている。

東北視察で習近平が「自力更生」を呼びかけた──新華網

2018年9月25日から28日にかけて、習近平国家主席は中国の東北三省を視察した。その模様を新華網が報道した。

それによれば、習近平は国有の重工業製造企業である「中国第一重型機械集団有限公司(略称:一重集団)」を訪問した際に以下のように述べている。

――いま国際社会では一国主義、貿易保護主義の風潮が高まっているが、われわれは必ず自力更生の道を断固として歩まなければならない。中国が本当に発展しようと思うならば、最終的には自分自身に頼るしかない。

習近平が広東視察で「自力更生」を呼びかけた──CCTV

2018年10月22日、習近平は広東省珠海の視察を行なった。ここは改革開放の地として、習近平の父親・習仲勲が「経済特区方案」を鄧小平に提起し、そこから改革開放が始まった記念の場所の一つである。だから、2014年12月、国家主席就任後に最初に視察した場所も、ここ広東だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中