最新記事

教育

同学年内の「生まれ月」の差は、意外に尾を引いている

2018年9月19日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

これは最新の2015年調査のデータだが、単なる偶然ではない。過去のどの年で見ても、早生まれの生徒群(1~3月生まれ)は、その他の生徒群よりも平均点が低くなっている<表2>。小4の理科では、2003年を除く全ての年で15点以上の差がある(黄色マーク)。

maita180919-chart02.jpg

同じ教室で机を並べていても、生まれ月の差(最大約1年)の影響があるようだ。上記は学力テストの結果だが、体力では生まれ月の効果がもっと出るのではないか。小さい子の場合、身体の発育量に1年の差があるのは大きい。スポーツ選手には4~5月生まれが多いというが、幼少期に体力テストで良好な結果を収めることで、運動が得意という自信がつき、それが継続するためかもしれない。

早生まれの子では、その逆が起こり得る。自分では頑張っているつもりでも、生まれ月という(いかんともしがたい)要因で人並みの結果を出せない。それが積み重なると、否定的な自我が形成されることになる。早生まれの不利が中学生まで引き継がれているのは、その影響と考えられる。

ちなみに欧米諸国では、生まれ月の学力差はここまで大きくない。保護者の意向で、学年を柔軟に遅らせることができるためだろう。だが、生まれ年度による学年制を厳格に用いている日本ではそうはいかない。

教師、とりわけ低学年の教師は、教室に心身の条件が異なる子どもが混在していることに留意する必要がある。テストの実施時期や評価規準を工夫すると同時に、「生まれが遅いのだから仕方がない面もある」ことを、当人に伝えるのもいいだろう。それをいいことに怠け癖がついては困るが、できないことをとがめるばかりというのも論外だ。

資料:IEA「TIMSS 2015」

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中