最新記事

災害

大型ハリケーンを前に動物が避難 フラミンゴは優雅にゴルフカートで

Hurricane Florence: How Zoos Keep Animals Safe

2018年9月14日(金)16時30分
ニコール・グッドカインド

2017年、超大型ハリケーン「イルマ」の上陸に備えてチーターを避難させるフロリダ州マイアミ動物園の職員 Adrees Latif-REUTERS

<世界の動物園では、戦争や災害のたびに世話をしてもらえなくなり命を落とすことも多い。だがアメリカにはここまで進んだ例もある>

9月13日午後、米サウスカロライナ州コロンビアにあるリバーバンクス動物園の職員たちは、ピンク色のフラミンゴ40羽を1羽ずつ、声を掛けて落ち着かせながら抱き上げゴルフカートに乗せ、臨時の屋内シェルターにエスコートした。9月14日未明にも米東海岸に上陸する予定の大型ハリケーン「フローレンス」には、普段暮らしている屋外の柵はとうてい歯が立たないからだ。

動物園はハリケーン上陸の前日までに、屋外で飼育する約150羽の鳥類を屋内の避難所に移す。移動はゆっくり着々と進めており、飼育係は9月10日から順次、鳥たちを避難させている。移動によるリスクを最小限に抑えるためだ。

9月13日夜には、アフリカゾウ2頭、キリン8頭、アフリカライオン3頭、アフリカライオンの子供3頭を、屋内にある安全な鉄筋コンクリートの檻に移動させる。ハリケーン上陸中、動物と世話をする人間の安全を確保するためだ。全部で2000種の動物が、ハリケーンが通り過ぎるまでの週末を屋内で過ごすことになる。

冷蔵庫や油圧ショベルも用意

ハリケーンの直撃が予想されるサウスカロライナ州では、すでに住民42万人超が避難したが、同州の動物園や自然保護区にいる動物の命を守るためには、さらなる手助けが必要だ。

リバーバンクス動物園がハリケーン対策を開始したのは今年5月。動物福祉課のディレクターを務めるジョン・デービスが、「簡単にできる対策」を見つけるため、現場で調査を始めた時だ。ハリケーンシーズンの到来までに、現場に散らかっていたものを片づけたり、必要な修理を済ませた。現場の写真を撮り、緊急時の避難計画をチェックするために動物ごとの担当と相談した。「現場の職員には、ハリケーンに備えた行動指針を常に意識して伝えてほしい」と、彼は本誌に語った。

ハリケーン・フローレンスへの避難準備を始めたのは9月8日だ。事前に計画をしていたので、何をやるべきかはわかっていた。

「必需品の注文をして、備品を避難所に移すことから始めた」と、彼は説明した。「現場に燃料の備蓄があることを確かめた。魚や動物の餌の注文も一気に増やした」

動物園は予備の餌を保存するため、冷蔵庫が使える18輪のトレーラー2台を用意。ペンギンに適した気温を維持し、魚の水槽に酸素を供給したり浄化したりするために、発電機一式も注文した。暴風雨による倒木を素早く取り除くために油圧ショベルもレンタルした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド

ビジネス

スターバックス中国事業に最大100億ドルの買収提案

ワールド

マスク氏のチャットボット、反ユダヤ主義的との苦情受

ワールド

ロイターネクスト:シンガポール、中国・米国・欧州と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中