最新記事

英国の食肉サンプル検査、5分の1で表示外の動物のDNAが検出された

2018年9月11日(火)15時45分
松岡由希子

5分の1で食品表示外のDNAが検出 iStock-alexxx1981

<2017年にイギリスで実施した食肉サンプル検査で、5分の1が明示されていない動物のDNAが検出されていたことがわかった...>

英国食品基準庁(FSA)が2017年に実施した食肉サンプル検査のうちの21.8%において、食品表示に明記されていない動物のDNAが検出された。

これは、英国情報公開法(FOIA)に基づくBBC(英国放送協会)からFSAへの情報公開請求によって明らかとなったもの。

ラム肉で最も多い77件が見つかった

FSAがイングランド、ウェールズ、北アイルランドのレストランからスーパーマーケットなどの事業者487社から合わせて665の検体を収集したところ、145の検体の全部もしくは一部が食品表示で明示されていない肉で形成されていた。業種別にみると、小売業者によるものが73件と最も多く、このほか飲食店から50件、食品加工業者からも22件見つかっている。

肉の種類別では、ラム肉が最も多い77件で、29件の牛肉、19件のヤギ肉、18件の豚肉がこれに続き、なかには4種類もの肉で形成されたものもあった。一方、形態別では、挽肉が41件と最も多く、ケバブやカレー、ソーセージなどでも見つかっている。

FSAではコンプライアンス違反が疑われるこれらの事業者をターゲットに食肉サンプル検査を実施したものの、FSAの検査結果を受けて、さらに個別の調査を実施し、告発などの措置を講じるかどうかは、管轄する地方自治体に委ねられている。

また、食料および飼料のサンプル分析データを蓄積するFSAのデータベース「UKFSSC」に食肉のサンプルデータを登録している英国内の地方自治体は半数にも満たず、フード業界の全容を明確に把握できる状態には至っていないのが現状だ。

食品偽装は、長年、世界各地で問題に

高価な食肉を安価なものにすり替える食品偽装は、長年、世界各地で問題となっており、英国をはじめとする欧州では、2013年、牛肉と偽って馬肉を混入させた加工食品が次々と見つかった「ホースミートスキャンダル」が大きな社会問題となった。今回明らかとなった2017年の食肉サンプル検査において馬肉は検出されていないが、食肉の品質や原産地にまつわる透明性の欠如に対して懸念が広がっている。

食肉のトレーサビリティ(追跡可能性)を担保する仕組みづくりとしては、英国の環境食糧農村地域省(DEFRA)が、食肉加工協会(BMPA)や農業園芸開発公社(AHDB)ら21の組織との提携のもと、電子IDを使って家畜をリアルタイムで追跡する「家畜情報サービス」の構築に2014年から取り組んでおり、2019年には完成する見込みだ。消費者の健康を守るうえでも、食肉の透明性の確保やトレーサビリティの担保がますます望まれる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中