最新記事

教育

まずは世界ランク200位以内 日本電産・永守氏が目指す型破り大学改革

2018年9月7日(金)10時42分

9月7日、日本電産を一代で世界のトップ企業に育てた永守重信会長が、日本の大学改革に情熱を注いでいる。写真は同会長。7月に東京で撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

日本電産を一代で世界のトップ企業に育てた永守重信会長が、日本の大学改革に情熱を注いでいる。今年3月に京都学園大学の理事長に就任。2020年には工学部を新設し、不足するモーター技術者の育成に乗り出す。偏差値偏重より実学重視の教育を徹底し、「これまでとはまったく違う大学を作る」。永守流の大学経営はまだ緒に就いたばかりだが、同氏は東大、京大をにらみ、早くも世界ランク入りに照準を当てている。

モーターは「産業のコメ」

永守会長がモーター専門の工学部を新設するのは、モーターの技術者不足が深刻になっているためだ。ロイターとのインタビューで同氏は、クルマの電動化、ロボット活用の広がり、省エネ家電の普及、物流革命というモーター需要の拡大を招く「4つの大波」が押し寄せているにもかかわらず、現状は「モーターの学問を教える大学がほとんどない」と不満をあらわにした。

モーターは近い将来、鉄、半導体に続く「産業のコメ」になると語る同氏は、技術者不足は経営の足かせになりかねないと危機感を強めている。だが「今年も500人近く新入社員採用したが、モーターの技術者はゼロ」。現在は社内にカレッジをつくって新入社員を育成しているが、今後は大学でも即戦力となる技術者を養成、拡大する需要に対応する。

永守氏を突き動かしているもうひとつの懸念は、現在の大学受験で、ブランドや偏差値至上主義がまん延している実態だ。自身の夢を追求し結果を出してきた同会長には、やりたいことより知名度やブランドを優先する大学選びが「社会に出ても、すぐに辞める」若者を生み出している原因と映る。

「ブランド主義と偏差値偏重教育が、日本の若者を駄目にした最大の要因だ」。永守会長は現在の教育にノーを突きつける。

まずは世界199位以内に

日本電産はこれまで6000人以上の大学・大学院卒の学生を採用してきたが、永守会長は学歴と入社後の実績は「まったく関係ない」と言い切る。だからこそ、京都学園大学の理事長も二つ返事で引き受けた。同大学は2019年4月に「京都先端科学大学」に校名を変更する。「偏差値は関係ない。まずは世界ランキングで199位以内となる大学をつくる」と意気込む。

英国の高等教育専門誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」が公表する世界の大学ランキング(2018年版)では、200位以内に入っている日本の大学は東京大学(46位)と京都大学(74位)のみで、その次は大阪大学と東北大学が201─250位となっている。つまり199位以内に入れば、日本では東大、京大に次ぐ3番目に高い評価を得られるというわけだ。

このランキングは教員1人当たりの学生数や論文の被引用件数、留学生比率などから算出するため、偏差値は関係ない。「この話を入学式でしたら、新入生や親は身を乗り出して聞いていた。10─20年後に(振り返ったら)素晴らしい大学を卒業したということになると言ったら、喜んでいた。そういう夢のある話をしないといけない」。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中