最新記事

人権問題

ベトナム女性人権活動家、突然の拘束 報道・言論の自由への道なお険しく

2018年8月12日(日)20時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

「暴力と拷問を止めて」と語るフイン・トゥク・ヴィーさん

<西側諸国との関係正常化を果たし、日本からも多くの観光客が訪れる美しい国ベトナム。だが、この国は一党独裁体制であるのは今も変わらない>

社会主義共和国であるベトナムで女性や少数者の人権保護、言論の自由などの実現を目指して活動中の女性ブロガーであり、女性人権活動家でもあるフイン・トゥク・ヴィーさんが8月9日、ベトナム中部高原ダクラク州ブオンホーの自宅で地元警察によって連行、逮捕されたことが明らかになった。

ヴィーさんはNPO団体の「ベトナム女性の人権保護(VNWHR)」の共同設立者の一人で、女性の政治犯や人権活動家を保護する運動に携わると同時にブログやFace Bookなどで自ら各種の問題提起や主張を発信するブロガーとしても知られる女性だった。

ベトナム当局はヴィーさんの逮捕についてその容疑を含めて公式見解を示していないが、治安当局による女性への人権侵害に関して国際的に発信するヴィーさんの「口封じ」が目的とみられている。

ヴィーさんの夫、レ・カン・ドゥイ氏によると8月9日午前7時ごろ、自宅にまず警察官2人が訪れヴィーさんと話しを始め、その後私服警察官を含む約30人が増員され、ヴィーさんの身柄を拘束、連行したという。

さらに1時間後には約40人の警察官による自宅の家宅捜索が始まり、ヴィーさんのラップトップのパソコン、携帯電話、カメラ、書籍や資料、服まで押収して持ち去ったという。

これまでたびたび警察による出頭要請、事情聴取の求めに対しヴィーさんがこれを一切拒否していたことから、同日の強制捜査となったとみられている。

ヴィーさん、最も影響力のある人権活動家

「VNWHR」のホームページにはヴィーさんがかつてアップした「暴力と拷問を止めて」という動画が残されている。動画の中でヴィーさんは切々と訴え掛けている。
「民主主義、自由、人権という価値は皆さんの国では当たり前でも私の国ではとても高い代償を払わなければならないのです」「ベトナムの子供たちは親が目の前で暴力の被害に遭っているのを見て育っているのです」「自由の主張はしばしば妨害され、制服を着た人々によってすら妨害されるのです」「法執行機関は躊躇なく暴力、拷問を加えてきます。基本的人権を取り戻したい。それにはどうかこの動画を皆さんがシェアしてベトナムの暴力と拷問を阻止する声を挙げてほしい」

このベトナムの人権侵害の闇を訴えるたった約3分半の動画が今回のヴィーさんの逮捕に繋がった可能性も指摘されている。

ニュース速報

ビジネス

マイナス0.1%の政策金利、深掘りの余地十分ある=

ワールド

北朝鮮の金委員長、水産物加工場を視察=国営メディア

ワールド

米有力上院議員、先進技術の対中輸出規制強化を政府に

ワールド

香港裁判所の「覆面禁止法」違憲判断、中国が強い懸念

MAGAZINE

特集:プラスチック・クライシス

2019-11・26号(11/19発売)

便利さばかりを追い求める人類が排出してきたプラスチックごみの「復讐劇」が始まった

人気ランキング

  • 1

    香港の完全支配を目指す中国を、破滅的な展開が待っている

  • 2

    トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書

  • 3

    米中貿易協議は既に破綻しかけている

  • 4

    余命わずかな科学者が世界初の完全サイボーグに!?

  • 5

    北京、動くか 香港デモ

  • 6

    香港デモ、理工大キャンパスがまるで「内戦」

  • 7

    香港の若者が一歩も退かない本当の理由

  • 8

    日本のノーベル賞受賞に思う、日本と韓国の教育の違い

  • 9

    深い眠りによって脳内の老廃物が洗い流されているこ…

  • 10

    「陰」のナショナリズムが流行る時──250年の歴史の中で

  • 1

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 2

    トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書

  • 3

    ペットに共食いさせても懲りない飼い主──凄惨な退去後の現場 

  • 4

    アメリカが繰り返し「ウソ」を指摘......文在寅直轄…

  • 5

    日本のノーベル賞受賞に思う、日本と韓国の教育の違い

  • 6

    文在寅政権の破滅を呼ぶ「憲法違反」疑惑──北朝鮮の…

  • 7

    香港デモ隊と警察がもう暴力を止められない理由

  • 8

    「安い国」になった日本の現実は、日本人にとって幸…

  • 9

    中国は「祝賀御列の儀」をどう報道したか?

  • 10

    深い眠りによって脳内の老廃物が洗い流されているこ…

  • 1

    マクドナルドのハロウィン飾りに私刑のモチーフ?

  • 2

    「アメリカは韓国の味方をしない」日韓対立で米高官が圧迫

  • 3

    意識がある? 培養された「ミニ脳」はすでに倫理の境界線を超えた 科学者が警告

  • 4

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 5

    インドネシア、巨大ヘビから妻救出した夫、ブタ丸呑み…

  • 6

    「武蔵小杉ざまあ」「ホームレス受け入れ拒否」に見る深…

  • 7

    トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請…

  • 8

    中国人女性と日本人の初老男性はホテルの客室階に消…

  • 9

    アメリカが繰り返し「ウソ」を指摘......文在寅直轄…

  • 10

    ペットに共食いさせても懲りない飼い主──凄惨な退去…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月