最新記事

日本社会

酷暑の夏、小学生に水分補給や保冷材も与えず走らせる少年スポーツの根性論とは

2018年8月9日(木)21時00分
島沢 優子(フリーライター)※東洋経済オンラインより転載

子供たちのスポーツは大人の都合を押し付けられている?(イメージ)

総務省消防庁によると、7月16〜22日の1週間に熱中症で救急搬送された人数と死者数が集計を始めた2008年以降で最多となった。搬送者数の速報値は全国で2万2647人で、うち65人が死亡した。

およそ4割が屋内からの搬送だというが、炎天下でスポーツをする子どもたちは大丈夫なのか。

クーラーボックスさえ持ってこないチーム

気象庁予報部が発表した関東甲信地方の7月31日から8月6日までの週間天気予報によると、向こう1週間は最高気温、最低気温ともに、平年よりかなり高くなるところもあるという。先週は台風上陸の影響で一時的に気温が下がったものの、再び熱中症の危険に向き合う日々が始まる。

「重大事故が起きやしないかと、気が気じゃない」

そう心配するのは、首都圏で少年サッカーのクラブで指導をしている30代の男性だ。台風がくる前の週末に大会参加したが、目も当てられない光景に遭遇した。

最高気温38度を記録したその日。小学1年生の大会で、スポーツドリンクや塩分タブレットの補給をさせないチームがあった。氷で首や体を冷やす様子もない。聞けば、氷や水を保管するクーラーボックスをチームで持参していないという。気温が38度なら人工芝のピッチの上は40度を軽く超えており、6歳児の体には文字どおり過酷すぎる環境だ。

「試合の合間はテントの日陰で過ごさせてはいたが、試合中、ハーフタイムはそのまま子どもは日なたに立たせたまま、ベンチでコーチが話をしていた。相手のチームはテントに戻らせているのに」と男性は憤りを隠せない。

「日なたで耐えるほうがすごいのだ」というような昔ながらの根性論に見えたという。

同じ日に行われた6年生の大会。男性の教え子が対戦した少年団も同様の「未装備」で、クーラーボックスなし、試合合間の患部冷却ナシ。よって後半に入ると、そのチームの選手はフラフラになり走れなくなった。見るからに熱中症の症状を見せていたが、ベンチに座ったコーチは逆にその子をしかり始めた。

「やれないのか!」

怒られた子どもはシクシクと泣き始めた。交替させられたその子のところに飛んで行って氷で体を冷やし始めたのは、なんと対戦相手である男性のクラブのコーチたちだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、州兵2人重体 トランプ

ワールド

ニュージーランド経済、下半期は拡大 需要安定化=中

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、5万円回復 ハイテク株し

ビジネス

英、高額所得者の国民保険料優遇措置を大幅削減へ 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中