最新記事

日本社会

酷暑の夏、小学生に水分補給や保冷材も与えず走らせる少年スポーツの根性論とは

2018年8月9日(木)21時00分
島沢 優子(フリーライター)※東洋経済オンラインより転載

「ボランティアでコーチを引き受けている人たちには頭が下がります。ただ、チーム全体の知識不足を感じる」と率直に話す。

社団法人日本サッカー協会からは各クラブに「炎天下で無理にやらせないよう、熱中症に細心の注意を払ってほしい」といった旨の通達が来ていたそうだ。協会が策定した「熱中症対策ガイドライン」を再度よく読むように、とのことだったというが......。

「(何年、何カ月も前から決まっている)練習や試合の中止を言い出すのは、かなり難しいのではないか。来年からはこの時期の大会は禁止と上(日本サッカー協会)から指示をするなり、会場を貸す側の自治体などが貸しませんと意思表示しないと、変わらないのでは」(前出の男性)

このようにサッカー少年を熱中症の危険にさらす大人の無理解。大きな問題だが、女子の場合も深刻なようだ。

一度でも熱中症になると、それがトラウマになる

都内で女子サッカーチームの運営にかかわっていた40代の女性は、夏が来るたびにお父さんコーチと衝突したという。

「プロになるとか最初から夢を持ってやる子が多い男子と違って、女子は間口が広い。ちょっとやってみようかなと始める子もいる。だからサッカーの楽しさを感じて続けてほしいのですが、夏に辞める子が1人か2人は必ずいる」

一度でも熱中症になると、それがトラウマになる。「サッカーをしたら、また頭が痛くなったり、息ができなくなる」と怖がって、辞めてしまうのだという。

そのような現実があるのに、コーチらはなかなか経験則を崩さない。


「暑いときにやらないと体力がつかない」
「(暑さへの)耐性をつけなきゃ。頑張っていれば、暑くてもプレーできるようになる」
「暑いくらいで練習を中止にしたら、やりたい子たちはどうするんだ? それでなくても部員が少ないのに、ほかのクラブに移籍されてしまう」

口々に反論されたという。自分たちも、似たような環境で頑張ってきたのだから、子どもたちにも強くなってほしいというわけか。

「私らが子どものときの暑さとは違うよと説得しても聞いてもらえない。愛情あっての言動なので、本当に難しい」と女性は視線を落とす。

熱中症になって休んでいる仲間の家に、チームメートが「頑張ろうよ」と言って迎えに行くケースもある。前出したスポ根コーチの娘たちのチームでの出来事だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中