最新記事

ネットビジネス

打倒ECの巨人アマゾン 実店舗持つウォルマートが挑むラストマイル配送の壁

2018年8月5日(日)17時35分

 7月30日、ウォルマートの経営幹部は昨年、1万4000人に上る株主の面前で、アマゾン・ドット・コムなどインターネット小売サービスに顧客を奪われないための思い切った計画を披露した。写真は「アソシエイト宅配2.0」と呼ばれるジョージア州ウッドストックでの社内プロジェクトに配送ドライバーとして雇用されたモーリス・トーマスさん。6月撮影(2018年 ロイター/Nandita Bose)

ウォルマートの経営幹部は昨年、1万4000人に上る株主の面前で、アマゾン・ドット・コムなどインターネット小売サービスに顧客を奪われないための思い切った計画を披露した。

それは直営店舗スタッフが、店頭での最長9時間に及ぶ通常のシフト勤務を終えた後、インターネットで注文された商品を直接、購入客の家まで配達するというものだ。

自身の店舗が抱える膨大な従業員を活用することで、配達コストを下げようとするこの計画は、米国で115億ドル(約1.3兆円)規模にある同社ネット小売事業を拡大させるための多角的な戦略の一環だ。

それはまたネット小売における大きな課題、配送拠点から玄関先までの「ラストワンマイル(最後の1マイル)」配送に対応するためのものだった。

ウォルマートの従業員にとっては、最低11ドルと定められている時給に加え、追加的な収入を得ることができる。

「世界中のアソシエイトが、注文を受けた商品を帰宅途中で顧客に配達する、と思っていただければいい」と同社ネット小売事業を統括するマーク・ロア氏は、昨年6月の株主総会で胸を張った。「これはまさしく勝負をひっくり返す可能性がある」

だがこの試みはあえなく頓挫した。

その数カ月後、ウォルマートは2つの州で開始していた当初実験プログラムから静かに退却、1月にはこれを完全に中止していたことが、ロイターが入手した資料や20人を超える従業員への取材で判明した。

「従業員による宅配」という取り組みに失敗した背景には、玄関先に安く早く荷物を届ける熾烈な競争において、アマゾンに追いつくための画期的な方法を探っているウォルマートの苦闘を垣間見ることができる。

同社のデータによれば、実店舗の買い物客がオンラインサービスも使い始めた場合、実店舗またはネット店舗のどちらかを利用する顧客よりも2倍近く利用額が多いという。

ウォルマートはニュージャージー州で「乗用車に積めるものならどんな商品でも店舗従業員が配達できる」という発想の下で、実験プログラムを開始。しかし、退社後の時間を使わなければならないことに懐疑的な従業員の反発を買い、この試みは頓挫した。この実験に参加した従業員16人に対するロイター取材で明らかになった。

同社は現在、ジョージア州ウッドストックの1店舗のみで従業員4人が配達するという、当初と比べかなり控えめなサービスを試行している。今回は、従業員向けのガイドラインも全面的に見直し、宅配対象商品も食料品や紙皿などの関連商品に限定した。

同社の広報担当者モリー・ブレイクマン氏は、今年初めに最初の実験プログラムを終了したことを認めたが、詳細については語らなかった。商品宅配のさまざまな方法を同社はテストしていると語り、「(ジョージア州店舗での)結果に勇気づけられている」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英建設業PMI 7月は44.3 20年5月以降で最

ワールド

アングル:トランプ関税で税率50%のブラジル、経済

ワールド

自然災害の保険金支払い、上期800億ドル 過去10

ワールド

インタビュー:政権安定化へ連立拡大、首相の交代必要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 9
    永久欠番「51」ユニフォーム姿のファンたちが...「野…
  • 10
    かえって体調・メンタルが悪くなる人も...「休職の前…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 9
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 6
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 7
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 10
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中