最新記事

イタリア

43人犠牲のジェノバ高速道路崩落 何が事故を呼び起こしたのか

2018年8月30日(木)11時00分

2つの橋の物語

昨年、シチリア島南部のアグリジェント近郊にある、今回崩落したものと同時代に建設された橋がぼろぼろになっていることが確認された。この橋も、モランディ氏のデザインだ。

だがこの時は、住民の支持を得た環境団体マレアミコが、橋の安全性を主張する自治体運営者の言い分を信用しなかった。マレアミコは地元検察当局に懸念を伝え、2017年3月に捜査が始まった。

マレアミコによると、橋の塔からコンクリ片が落下していたのにもかかわらず、橋を運営するアナスはアグリジェントの高架橋が崩落する恐れはないと請け合った。そこでマレアミコは、検察当局に朽ちた塔の映像を送ったのだ。

「検察が捜査を開始した直後、アナスは高架橋を閉鎖した」と、マレアミコの担当者は話す。

アナスの広報担当者は、捜査を受けて橋を閉鎖したのではないと話す。同社は当時発表した声明の中で、以前から大規模な補修工事を予定していたと主張。数カ月後、橋の一部通行が、軽量車両限定で再開された。

だが地元検察当局トップであるルイージ・パトロナッジオ氏の話はこれとは異なる。「橋が崩落する可能性があるとみて、介入した」と、同氏は語る。「アナスに連絡すると、技術者を説明によこしたが、その技術者らが、橋は危険だと断言した。そこで、われわれの助言をもとに、アナスは橋を閉鎖したのだ」

ジェノバでは、担当検察官のドビディオ氏が、これまで橋の状況について捜査するよう、正式な申し立てを受けたことはないと言う。

この大惨事の刑事責任を負うべき人物がいるか地元検察官が捜査しているのと並行して、イタリア政府は、国内全土のインフラ、特にモランディ氏のデザインによる老朽化した橋を中心に、安全確認を行うと表明した。

ベニス大学で構造分析を専門にするジャンカルロ・ビロッティ教授は、老朽化しつつも明確な構造的問題点が表面化していなかったジェノバのような橋の場合、崩落を予見することは難しいと話す。「どうしたいというのか。すべての高速道路の橋を閉鎖するのか」

(Stefano Bernabei記者, Elisa Anzolin記者、Valentina Za記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

[ローマ/ミラノ 23日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、JPモルガンとCEO提訴 デバンキング

ワールド

欧州は行動の勇気欠く、ゼレンスキー氏が批判 ダボス

ビジネス

米国債保有増、8割が欧州 25年に「米国売り」見ら

ワールド

米エネ長官、世界の石油生産倍増を提唱 グリーンエネ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 5
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ノーベル賞に選ばれなかったからグリーンランドを奪…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中