最新記事

異常気象

人間活動がはじめて季節を変えた? 日本と世界を襲う記録的な猛暑の背景

2018年7月25日(水)16時30分
松岡由希子

人間が「季節循環に影響を及ぼしている」との研究が発表された

米エネルギー省(DOE)傘下ローレンス・バリモア国立研究所のベンジャミン・サンテール博士を中心とする研究チームでは、7月20日、米学術雑誌「サイエンス」で「人間が対流圏温度における季節循環に影響を及ぼしている」との研究論文を発表。

衛星が実際に観測した温度データと、気候モデルに基づきシミュレーションした人為的要因のフットプリント(痕跡)を分析し、対流圏温度の季節循環において、人間活動に起因するフットプリントを、自然変動によるものから分離して示すことに成功した。対流圏温度の季節変動幅は、とりわけ中緯度において大きくなっており、水陸分布の違いにより南半球よりも北半球でより大きくなっているという。

「大西洋循環の弱体化が地表温度の上昇を招く」という研究も公開

また、海洋の循環流が地球温暖化に影響を及ぼしているとの指摘もある。米ワシントン大学と中国海洋大学との共同研究プロジェクトは、7月18日、学術雑誌「ネイチャー」において「大西洋循環の弱体化が地表温度の上昇を招く」との研究論文を公開した。

これによると、大西洋循環の減速化は、地球温暖化によるものではなく、数十年規模の自然変動サイクルによるものだが、これによって、今後、気温が上昇する可能性があるという。

海流のスピードは海洋表層の熱が深層にどれだけ多く移動するかによって決まり、早く循環するほど多くの熱を深層に送り込むことができる。裏を返せば、海流が遅くなると海洋での熱の蓄積量が少なくなり、大気の温度が上昇しやすくなるというわけだ。

異常気象のメカニズムの解明や、地球温暖化・気候変動との関連性などを探る研究は、防災・減災だけでなく、社会経済や産業の持続可能な運営という観点からも、注目すべきテーマのひとつだ。

私たちも、まずは今シーズンの記録的な猛暑のもとで日々の健康管理に心がけながら、これらの動向に関心を持ち続けることが賢明といえるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

香港取引所、東南アジア・中東企業の誘致目指す=CE

ワールド

米ミネソタ州議員射殺事件、容疑者なお逃走中 標的リ

ワールド

IEA、石油供給不足なら備蓄放出の用意 OPEC「

ワールド

金価格約2カ月ぶり高値、中東紛争激化で安全資産に逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中