最新記事

アメリカ外交

傍若無人なトランプ欧州歴訪で同盟国に混乱 陰で笑うロシア

2018年7月18日(水)14時05分

7月16日、トランプ米大統領の1週間にわたる欧州訪問は、同盟国の心情をかき乱した一方で、ロシアのプーチン大統領がほくそ笑む結果となった。写真はホワイトハウスに戻ったトランプ大統領夫妻(2018年 ロイター/Yuri Gripas)

トランプ米大統領が16日に終えた1週間にわたる欧州訪問は、同盟国の心情をかき乱した一方で、ロシアのプーチン大統領がほくそ笑む結果となった。

ベルギー、英国、フィンランドと立ち寄ったトランプ氏は再三、北大西洋条約機構(NATO)諸国を愚弄(ぐろう)するような発言をした。それとは対照的に、米国情報当局が2016年の米大統領選にロシアが介入したと結論を下したにもかかわらず、プーチン氏の機嫌を取ろうとする意図を隠さなかった。

こうしたトランプ氏の態度から、今回の外遊は就任以来最も強い批判を浴びる形となっている。

今回の日程中、つつがなく運んだと言えるのは、自身が所有するスコットランドのゴルフ場でのプレーと、エリザベス英女王との面会ぐらいだった。もっともトランプ氏が女王を待たせ、前を歩いたことも物議を醸している。

ブリュッセルのNATO首脳会議に際してトランプ氏は、同盟諸国を混乱に陥れた。各国の防衛予算拠出が不十分だとこき下ろした後、今度は拠出公平化に向けた取り組みを称賛したからだ。会議2日目には45分遅刻しながら、議論のテーマを乗っ取ってしまった。

バルト海の資源輸出パイプラインを支持しているドイツについては「ロシアの人質」になっていると批判してメルケル首相を侮辱したかと思えば、メルケル氏とはすばらしい関係を築いていると強調するありさまだった。

またトランプ氏はメイ英首相との会談前に、最近メイ氏と対立して外相を辞任したボリス・ジョンソン氏を立派な首相になると新聞のインタビューで持ち上げ、メイ氏が打ち出した欧州連合(EU)離脱方針に「ダメ出し」をしながら、一転してメイ氏を偉大な指導者と呼んだ。

これらのトランプ氏の無軌道ぶりを受け、あるNATO関係者は「トランプ氏(の言動)がやがて成熟するという期待は欧州では消え去り、われわれはもはやそうした幻想は持っていない」と話した。

英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の米州プログラム責任者レスリー・ヴィンジャムリ氏は、トランプ氏が最初にツイッターを通じて同盟国を批判し、その後公式の場で全てうまくいっていると宣言するやり方は、意図的に思われるとの見方を示した。この二面性を効果的に使い分けているのだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月コンビニ売上高は8カ月連続増、気温低下・販促

ビジネス

首都圏マンション、10月発売戸数28.2%減 23

ワールド

中国原油輸入、10月はロシア産が今年最高 クウェー

ワールド

サウジへのF35売却、イスラエル運用機より性能劣る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 8
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中