最新記事

救助

タイ洞窟のサッカー少年たち、心身を支える瞑想で耐えた9日間

2018年7月9日(月)15時30分
松丸さとみ

少年たちがあの状況で心の安定を保てた理由 Thai Navy Seal-REUTERS

<タイの洞窟に閉じ込められた少年たちのうち4人が救出されたが、少年たちがあの状況で心の安定を保てた理由とは>

地元の少年がみんなやる「通過儀礼」で洞窟の中へ

タイの洞窟の中に15日間閉じ込められ、ようやく一部が救出されたサッカーチームの少年たち(9日朝の時点で4人を救出済み)。狭く暗い洞窟内に食べ物もない状態で閉じ込められていた割には、発見時のビデオに映し出された少年たちが明るく元気だった様子を見て、安堵しつつも不思議に思わなかっただろうか? 少年たちは一体どうやって、あの状況で心の安定を保てたのだろうか?

タイ北部にあるタムルアン洞窟に閉じ込められたのは、サッカーチームの少年ら12人(11〜16歳)と25歳のコーチの計13人。6月23日に洞窟へ入って行方が分からなくなり、9日後の7月2日に全員無事で発見された。そこから実際に救出されるまでにはさらに1週間近く(大部分の少年たちはそれ以上)かかることになった。

英ニュース専門局スカイニュースによると、少年たちがこの洞窟を訪れた理由は、「一番奥まで行って壁に名前を書いて戻って来る」という、地元の少年たちがやるお遊び的な「通過儀礼の儀式」の一環だった。ところが、急激に大雨が降ったことで水位が上がり、身動きが取れなくなってしまった。

英紙インディペンデントによると、少年たちは発見されるまで何も食べず、水は洞窟の壁から滴り落ちてくるものを飲んでいた。懐中電灯を1つだけ持っていたが、そのうち電池が切れてしまったという。

発見時、少年たちは瞑想をしていた

食料もない真っ暗な洞窟の中で、わずか11〜16歳の少年たちが9日間も行方がわからないと聞いて、外で待っている人たちも望みを持ち続けるのは難しかっただろう。少年たちの状況は、閉所恐怖症の人なら想像しただけでパニックになってしまいそうだ。

豪紙ジ・オーストラリアンは、捜索で洞窟に入ったダイバーが発見した時、少年たちは瞑想をしていた、と伝えている。体力を消耗しないよう、そしてパニックにならないよう、コーチのエッカポル・ジャンタウォンさんが少年たちに瞑想を教えたのだ。

ジャンタウォンさんのおばのシビチャイさんがジ・オーストラリアンに話した内容によると、ジャンタウォンさんは10歳の時に病気で家族全員を失い、その後は仏教の僧院で暮らした。孤独で寂しげだった少年はその僧院で、心身たくましい青年に成長した、とシビチャイさんは話す。

米紙ニューヨーク・タイムズは、ジャンタウォンさんは僧侶として10年過ごし、現在もときどき僧院に戻り、僧侶とともに瞑想すると伝えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ワールド

アングル:9月株安の経験則に変調、短期筋に買い余力

ビジネス

ロシュ、米バイオ企業を最大35億ドルで買収へ 肝臓

ワールド

ドイツ銀行、第3四半期の債券・為替事業はコンセンサ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中