最新記事

犯罪対策

インドネシア、首都の強盗増加に警察が強硬姿勢「抵抗すれば射殺!」

2018年7月5日(木)19時37分
大塚智彦(PanAsiaNews)

凶悪な犯罪に立ち向かうインドネシアの警官たち、果たして彼らの射撃の腕前は? Antara Foto/ Didik Suhartono / via REUTERS

<増加する犯罪対策のため、ジャカルタの警察は警察官に「抵抗する者は射殺も止むなし」と殺しのライセンスを発効した>

インドネシアの首都ジャカルタの治安を預かる首都圏警察は、最近ジャカルタで急増している路上や住宅街での窃盗、強盗事件に対処するために要員を増員している。さらに容疑者逮捕に際して、もし抵抗するようなケースがあれば「射殺も止むなし」という強硬な姿勢で臨むよう指示をだしたことが分かった。

地元紙などは「首都警察官に射殺許可、殺しのライセンス付与」などとセンセーショナルに報道する事態になっている。

7月1日、ジャカルタ中心部のチュンパカプティ地区でバイクタクシーの客だった男性(37)が路上で強盗に遭い、殺害された。さらに翌2日には中央ジャカルタのスディルマン通りのトサリで強盗事件4件が連続して発生した。

こうした事態を受けて首都圏警察本部のアルゴ・ユウォノ報道官は地元マスコミに対して、7月3日に約1000人の警察官を増員して「特に夜間のストリート・クライム(路上犯罪)にあてる」としたうえで、警戒や巡回にあたる警察官に対しては「容疑者が事情聴取や逮捕の際に抵抗した場合、断固とした対応をとるよう警察長官からの指示があった。射殺も辞さないということである」と述べた。

ジャカルタに限らずインドネシアでは警察官の職務執行に関しては現金による賄賂で逮捕や検挙を免れようとするケースが多く、賄賂を受け取って見逃す警察官が存在することも事実である。しかし今回、アルゴ報道官は「(賄賂などの)交渉の余地は全くない」と容疑者側にも警察官側にも厳しい姿勢を改めて示した。

大統領警護隊員も被害に

6月8日にはジョコ・ウィドド大統領、ユスフ・カラ副大統領、さらに歴代の大統領経験者の身辺警護にあたる大統領警護隊の現職隊員が、北ジャカルタのマンガブサール地区で車を運転中に盗難の被害に遭う事件も起きていた。

手口はある意味昔ながらの典型的なもので、運転中に通りがかりのバイクの運転手から後輪のタイヤがパンクしている、と指摘され、道路脇に車を寄せてタイヤを点検中に別のバイクに乗った犯人がロックしていない車のドアを開けて車内のものが盗まれたのだ。

警護隊員もつい油断して車内にあったカバンが奪われた。これだけなら単なる盗難事件だが、問題になったのはカバンの中身。パソコンや外付けハードディスク、現金など総額で約20万円相当の物品が消えたのだが、ハードディスクにはジョコ・ウィドド大統領の「国家機密級」という重要経済政策のデータが入っていたことが分かり大騒動となった。通報を受けた警察が現在犯行グループを鋭意捜索中だが、容疑者逮捕にもデータ回収にも至っていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「北朝鮮問題は解決可能」、金正恩氏と良好

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦「1週間以内に実現可能」

ワールド

イラン、IAEAの核施設視察を拒否の可能性 アラグ

ワールド

「トランプ氏の希望に応じる」、FRB議長後任報道巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 7
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中