最新記事

中越関係

ベトナムで反中感情が再燃、政府の外資誘致に抗議デモ

2018年6月25日(月)11時45分

6月19日、中国に対する問題が浮上した場合、ベトナムの世論がどれほど簡単に一本化され、抗議する市民を動員できるかは、この国の各都市で起きている数千人規模の抗議行動が物語っている。写真は17日、ベトナムのハティン省で、外国企業向けの経済特区計画などに反対する人々の抗議デモ(2018年 ロイター)

中国に対する問題が浮上した場合、ベトナムの世論がどれほど簡単に一本化され、抗議する市民を動員できるかは、この国の各都市で起きた数千人規模の抗議行動が物語っている。

ベトナムで厳密には違法とされるデモが今月、2週連続で週末に発生した。その引き金となったのは、外国企業向けの経済特区を沿海部に設置するとの計画が、中国企業がベトナムに進出する足掛かりになるのではないかという国民の懸念を招いたことだ。

この経済特区の計画自体には、中国への言及はない。たがベトナム国民の感情はすでに定まっているようだ、と複数の政治アナリストは言う。中国の利権がベトナムの国策に影響を及ぼしているという根強い疑惑をあおるようなフェイスブック投稿が人気を集めている。

問題の核心には、中国の「横暴」に悩まされてきたという数世代にわたる国民の怒りが、政権を担うベトナム共産党に対する信頼感の欠如と重なり、爆発しやすくなっているという背景がある。

「ベトナム政府は国内の反中感情を過小評価している」と語るのは米戦略国際研究所の東南アジア専門家マレー・ヒーバート氏。「ベトナム国民の多くは、国の主権を中国から守るための政府努力が十分ではないと考えている」

フェイスブックなど、ベトナム国民9000万人の半数が利用しているソーシャルメディアによって、こうした怒りが爆発しやすく、抑制しにくいものにしている。

抗議行動が全国各地に広がったことで、ベトナムの国会は先週、経済特区に関する議決を10月に先送りした。

抗議行動を防ぐために、17日には主要都市における警備が強化されたが、ハティン省中心部では数千人が集まり、多くが「中国の共産主義者に1日たりとも土地を貸すな」というメッセージを掲げた。

中国が海外での企業活動を推進するために「一帯一路」イニシアチブを推進し、南シナ海のほぼ全域にわたる領有権確保を狙って強硬行動をとるならば、こうした緊張が長引く可能性は高い。

中国は、ベトナムも領有権を主張しているスプラトリー(中国名・南沙)諸島やパラセル(西沙)諸島における人工島建設や軍事基地化を加速しており、3月にはベトナム政府に対し、沖合数カ所での大規模な油田掘削を中止するよう、ここ1年間で2回目の圧力をかけてきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ノーベル平和賞マチャド氏、授賞式間に合わず 「自由

ワールド

ベネズエラ沖の麻薬船攻撃、米国民の約半数が反対=世

ワールド

韓国大統領、宗教団体と政治家の関係巡り調査指示

ビジネス

エアバス、受注数で6年ぶりボーイング下回る可能性=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 3
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 4
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡…
  • 5
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中