最新記事

在韓米軍

トランプの「米韓演習中止」で米軍困惑 即応体制維持できるか

2018年6月17日(日)11時00分

どんな訓練なら可能か

米国家安全保障会議(NSC)の関係者は、今回の凍結発表後も、なんらかの訓練は継続されると話す。

「韓国防衛に関するわれわれのコミットメントはまったく変わらない」とこの関係者は語る。「通常の準備訓練や訓練交流は継続される」

元米空軍士官で現在は予備役のテッド・リュウ下院議員(民主党)は、軍事演習と「通常準備訓練」の線引きは困難だと指摘する。

「2つは、同じものに属する異なるパーツだ」と、下院外交委員でもあるリュウ氏は話した。

いずれにしても、毎年定例の「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン演習」が今年実施される可能性は低くなったとみられている。

昨年8月に行われた同演習には、米軍から約1万7500人が参加し、韓国軍と合同で訓練を行った。ほかに、オーストラリア、カナダ、コロンビア、デンマーク、ニュージーランド、オランダ、英国の各部隊も参加した。

米下院軍事委員会のソーンベリー委員長は、今年8月に予定していた同訓練に影響が出てくるとの見方を示した。

「大規模な合同軍事演習は中止される方針だと理解している」と、同委員長は語り、交渉を行い「北朝鮮を試す」トランプ政権の取り組みを支持すると付け加えた。

他の主な米軍演習は、来年春まで予定されていないと米軍関係者は言う。そのため、外交官や軍の計画立案者には時間的余裕が生じるとみられる。

米韓合同演習は、毎年春に行われる「フォールイーグル」と「マックスサンダー」が重要だが、今年の両演習は、先月終了した。

マックスサンダーの空中戦訓練にいら立った北朝鮮は、今回の米朝首脳会談開催を脅かす声明を出して反発。フォールイーグルは、戦争想定シナリオに沿って実施され、陸海空軍に加え特殊部隊も参加する。

1つの可能性は、いくつかの合同訓練を韓国の外で行うことだ。米軍のインド太平洋軍の域内には、通常訓練の機会が豊富にある。

小野寺国防相は13日、日米合同演習は不可欠であり、継続されると述べた。

リュウ議員は、北朝鮮との衝突想定シナリオを適切に再現するのが難しいとして、米韓演習を日本やグアムで行う可能性について否定的な見解を示した。「グアムは北朝鮮に似ていないので変だろう。日本もそうだ。(グアムや日本での演習実施は)有用性が不透明だ」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Phil Stewart

[ワシントン 13日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が列車で北京へ出発、3日に式典出席 韓国メ

ワールド

欧州委員長搭乗機でGPS使えず、ロシアの電波妨害か

ワールド

ガザ市で一段と戦車進める、イスラエル軍 空爆や砲撃

ワールド

ウクライナ元国会議長殺害、ロシアが関与と警察長官 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中