最新記事

エネルギー

対立から連携へ OPECと米国シェール業界の関係に変化

2018年6月19日(火)10時41分

6月14日、石油輸出国機構(OPEC)と米国のシェールオイル業界は、ほんの数年前にはあからさまに敵意をぶつけ合う関係だった。しかし今では両者の間で、原油の需給バランスを保つには連携が欠かせないとの理解が広がりつつある。写真はロシアの油田で2016年撮影(2018年 ロイター/Sergei Karpukhin)

石油輸出国機構(OPEC)と米国のシェールオイル業界は、ほんの数年前にはあからさまに敵意をぶつけ合う関係だった。しかし今では両者の間で、原油の需給バランスを保つには連携が欠かせないとの理解が広がりつつある。

来週OPECとロシアなどがウィーンで産油国会合を開く際にも、シェール企業の経営トップがOPEC加盟国の閣僚と意見を交換する見通しだ。

原油価格はこの1年間で40%以上も上昇。油価上昇は産油業界にとって増益要因だが、電化が進む中で石化燃料の需要を冷やすマイナス面も持つ。

米シンクタンクの外交問題評議会でエネルギー安全保障・気候変動プログラムのディレクターを務めるアミー・メイヤーズ・ジャフェ氏は「原油価格の持続的上昇が世界経済にとって大きな問題となる段階に入りつつある。OPECとシェール業界は生産以外にもより大きな課題を抱えている」と指摘した。

OPECとシェール業界は今年に入ってから既に2回話し合いの場を持っており、来週の産油国会合で3回目の会合が設定されている。最適な原油の需給を見出すことが重要な議題になる。

シェールオイル開発の先駆的存在であるコンチネンタル・リソーシズの創設者で富豪のハロルド・ハム氏が、ヘスのジョン・ヘス最高経営責任者(CEO)やパイオニア・ナチュラル・リソーシズののスコット・シェフィールドCEOとともにOPEC加盟国の閣僚と懇談する予定。

こうした懇談は、産油国会合自体とは別に行われる。

コンチネンタルのハム氏は2014年にはOPECを「牙をなくした虎」と揶揄したが、その後は発言のトーンが変わった。今は収益性や生産抑制を重視するよう同業他社への働き掛けを始めており、先月はサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコがヒューストンで開いた取締役会に出席した。

もっともシェール業界は反トラスト法によって生産面での協調を禁じられており、OPECと組んで原油相場の急激な変動や上昇を抑えたいとの望みは実現が難しい。

2015年の米石油輸出解禁に尽力したハイディ・ハイトキャンプ上院議員(民主党)は「いかなる形の協調についても討議することはない。石油需要の見通しについて話し合うだけだ」と述べた。

実際のところ、米石油大手でもセンテニアル・リソーシズ・デベロップメントのマーク・パパCEOやコノコフィリップスのライアン・ランスCEOは懇談への出席を計画したものの結局見送った。

ハイトキャンプ氏は「(米シェール企業は)独立性を保ち、米国の利益を最優先すると期待している。われわれがOPECに加盟することはないし、OPECとは厳しく競っていく」と強調している。

とはいえ、そうした競争関係にあってもOPECとシェール業界は一蓮托生だという認識を強めている。外交問題評議会のジャフェ氏は「油価が跳ね上がれば、消費者は電気自動車に乗り換えるだろう」と警告した。

(Ernest Scheyder記者)

[ヒューストン 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 健康長寿の筋トレ入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月2日号(8月26日発売)は「健康長寿の筋トレ入門」特集。なかやまきんに君直伝レッスン/1日5分のエキセントリック運動

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-「安全の保証」巡り首脳レベルの協議望む=ウク

ビジネス

訂正米PCE価格、7月前年比+2.6% コアは5カ

ワールド

トランプ氏のFRB理事解任巡る審理開始、裁判所判断

ワールド

プーチン氏、トランプ氏欺くことに 露ウ会談約束しな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中