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米国、AIの軍事利用加速 ビッグデータ活用でミサイル発射の兆候察知へ

2018年6月11日(月)14時15分

AI軍拡競争の懸念

国防総省は、軍事システムにおけるAI導入の推進という点で、中国やロシアと競争状態にある。その目的は、特定任務を果たすために自ら学習する能力を持つ、より高度な自律的システムを生み出すことだ。

ミサイルによる潜在的な脅威を特定し、移動式発射装置を追尾するためにAIを活用するという同省の研究は開始されたばかりであり、総合的な取組みの一部でしかない。

AIによるミサイル対策研究について詳細はほとんど知られていないが、移動式ミサイル発射装置の追尾システムについては、すでに米軍内でプロトタイプの試験が始まっていると、ある米国当局者はロイターに語った。

このプロジェクトには、首都ワシントンの軍民双方から研究者が参加。米情報機関系のベンチャーキャピタル「In-Q-Tel」が出資した民間企業が開発を手掛けた先進的技術が軸になっているという。

研究の推進に向けて、同プロジェクトでは情報機関系の商用クラウドサービスに接続し、悪天候下や森林内でも観測できる高度なレーダーなどから得たデータのパターンや異常を探している。

ロイターが閲覧した予算関連文書では、移動式ミサイル発射装置追尾プログラムの範囲を「4+1問題の残る部分」にまで広げる計画に言及している。「4+1」とは国防総省の用語で、中国、ロシア、イラン、北朝鮮の4カ国に加えてテロリストグループを指す。

ミサイル対策におけるAI利用の賛成派も、反対派と同様、大きなリスクが伴うことに異論はない。

AIを使うことで、核戦争危機における意志決定を加速する可能性がある。コンピューターに由来する判断ミスが起きる可能性が高まり、さらに、ロシアや中国とのあいだでAI軍拡競争が始まることで、グローバルな核の均衡が崩れかねない。

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