最新記事

日朝関係

安倍首相、総裁3選目指し北朝鮮交渉に意欲 拉致で成果なければ逆風も

2018年6月26日(火)12時37分

6月26日、安倍晋三政権は、拉致問題の解決を図るため、日朝首脳会談に強い意欲を示している。9月の自民党総裁選でも外交力を前面に出すことで3選を狙う構えだ。写真は北朝鮮による拉致被害者家族連絡会と会談する安倍首相(写真右)。3月都内での代表撮影(2018年/ロイター)

安倍晋三政権は、拉致問題の解決を図るため、日朝首脳会談に強い意欲を示している。9月の自民党総裁選でも外交力を前面に出すことで3選を狙う構えだ。ただ、その前提となる実務者レベルでの交渉が日朝間で進んでいないとの見方が与党内にあり、一部には日朝首脳会談の早期実現はハードルが高いとの観測も浮上。自民党総裁選の行方とも絡み、同党内には、様々な思惑が交錯している。

米朝首脳会談が12日に行なわれて以降、安倍首相は北朝鮮との直接対話に強い意欲を示してきた。トランプ米大統領が米朝首脳会談で拉致問題を提起し、その後の日米首脳電話会談で「拉致問題は解決ずみ」と金正恩・朝鮮労働党委員長が発言しなかったことを確認。その直後から「米朝会談を機に北朝鮮と直接向き合う」「拉致は北朝鮮と直接、解決しなければならない」と述べていた。

複数の自民党関係者によると、金正恩委員長から「拉致問題は解決済み」との言及がなかったことを安倍首相とその周辺が評価。今後は拉致や核・ミサイル問題が解決するならば、人道支援や経済支援の検討が可能になるとのスタンスに変化してきたという。

また、安倍政権内には、早期の日朝首脳会談実現に前向きな声もあり、複数の政府・与党関係者は、8月の平壌訪問や9月中旬にロシアのウラジオストクで開催される東方経済フォーラムに出席する日朝首脳が、何らかのタイミングで会談することも選択肢の1つとして上がっているという。

だが、首脳会談の実現には、高いハードルが待ち受けている。ある自民党関係者は、金丸信・元自民党副総裁のような北朝鮮との太いパイプを持っている有力政治家が今はおらず、小泉純一郎・元首相が平壌を訪問した時のように、政府内に北朝鮮政府高官と頻繁にコンタクトできる交渉ルートもないと話す。

その自民党関係者は「現在のところ、政府ルートの日朝間の太いパイプはないだろう」と述べる。

外務省の志水史雄・アジア太平洋局参事官が今月14日、ウランバートルで開かれたモンゴル政府主催イベントで、北朝鮮のキム・ヨングク外務省軍縮平和研究所所長と接触した。

だが、北朝鮮政府内で、どのような影響力を持つポストなのかも不明で、自民党関係者の1人は「韓国の文在寅大統領とそのスタッフに相談したほうが早道」と懸念する。

また、別の自民党関係者は、安倍首相にとって、首脳会談が実現しても、拉致問題で目立った成果がなければ「政治的には逆効果になる」と話す。

このため「ウラジオストクのイベントに参加し、金委員長と短時間、会談するほうが望ましいのではないか」と述べる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、銀行に影響する予算措置巡りイタリアを批判

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍

ビジネス

三菱UFJFG社長に半沢氏が昇格、銀行頭取は大沢氏

ワールド

25年度補正予算が成立=参院本会議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中