最新記事

若者

高齢者の負担で若者に一時金を──「世代間格差」解消へ英シンクタンク

2018年5月29日(火)20時00分
ベンジャミン・フィアナウ

豊かな老後を送る高齢者とそれを支える若者世代の格差は深刻 georgeclerk/iStock

<高齢化が進むベビーブーマー世代を支えるミレニアル世代とZ世代の負担が過大にならないよう25歳で受け取る「市民相続」。これで世代間戦争は回避できるか?>

1981~1996年生まれの「ミレニアル世代(現在22~37歳)」と1996年~2011年生まれの「Z世代」には、25歳になった時点で「市民相続金」として1万ポンド(約1万3500ドル)を支給するべきだと、イギリスのシンクタンクが提言した。高齢化が進むベビーブーマーと若者世代の間の世代間格差を埋めわせ、若者が将来にもっと希望がもてるようにするのが目的だ。

中・低所得層のための研究を行う英「レゾリューション財団」は、一人1万ポンドの財源は、年金受給者を対象にした増税で賄うことを提案する。拡大を続ける世代間の生活水準格差を埋めるため、高齢者から若い世代に所得を再分配する。ただしこの資金が確実に若者の教育費や住宅費、起業資金や将来のための貯蓄に回されるようにすることを義務付ける。

「ばらまき」にしても足りない?

この異例の提言には、賛成派と反対派の双方から批判の声が上がっている。反対派は、給付は「近視眼的なバラまき政策」にすぎないと主張。賛成派は、1万ポンドぐらいでは起業にも奨学金の返済にも間に合わず、焼け石に水だと指摘する。

レゾリューション財団によれば、イギリスではミレニアル世代の10人に6人が20代後半を迎えており、政府から1万ポンドの給付金を受け取ることで、彼らの財産はほぼ倍増するという。ベビーブーマー世代とミレニアル世代・Z世代の経済格差を是正するための足掛かりになるかもしれない。

5月8日に発表された提言は「高齢世代よりも、若い世代の方が大きな経済的リスクを負い、資産も少ない。私有財産権を前提とした民主主義を維持するためには、この不均衡を是正する必要がある」と指摘。提言作成を委託した保守党のデービッド・ウィレッツ上院議員は「異なる世代を公平に扱う上でイギリスが直面している課題は、もはや誰も無視できない」と述べ、「我々には行動する義務がある」とした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FRB議長人事、大統領には良い選択肢が複数ある=米

ワールド

トランプ大統領、AI関連規則一本化へ 今週にも大統

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中