最新記事

脱北者

攻勢強める北朝鮮 韓国メディアの「脱北謀略説」利用し集団脱北者の返還求める

2018年5月21日(月)19時09分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

2016年4月7日、北朝鮮レストランから集団脱北した13人が、仁川空港から入国したときのようす。JTBC / YouTube

<米朝首脳会談を控えて、これまでの友好ムードから一転して米韓に対して攻勢を強めてきた北朝鮮。今度は脱北者返還を強く要求してきた>

北朝鮮の朝鮮中央通信は19日、「南朝鮮当局は傀儡保守逆賊の輩の政党によって強制拉致された北朝鮮の女性公民を遅滞なく返還し、北南関係系善の意志を示さなければならない」という北朝鮮赤十字中央委員会報道官とのインタビュー形式の記事を掲載した。これは、2016年4月に中国の北朝鮮レストランから集団脱北した女性従業員たちを韓国政府が返還しなければ、4月の南北首脳会談で合意された南北離散家族再会事業が中止されるということを示唆したものだ。

また、この北朝鮮の要求は、2016年の「北朝鮮レストラン従業員脱北事件」について、最近韓国のケーブルテレビ局JTBCが「本人たちの意志に反した韓国政府によって企画された強制的なものだった」というスクープ報道をしたことを逆手に取り、過去の保守政権による積弊壟断を掲げる文在寅(ムン・ジェイン)政権に対して脱北者返還という要求で揺さぶりをかけてきたという点でも韓国政府にとっては頭の痛い問題になりそうだ。

北朝鮮に利用される立場となったJTBCなど韓国メディアによれば、北朝鮮側は昨年1月の南北高位級会談の際にも、韓国側が離散家族再会事業を要求すると、脱北した北朝鮮レストラン従業員たちの送還問題を取り上げてきたが、今回はJTBCのスクープした報道を元により強力に返還を求めてきているようだ。

北朝鮮側が問題としている、2016年の北朝鮮レストラン従業員脱北事件は、中国浙江省の寧波市にある北朝鮮が運営しているレストラン「柳京食堂」から13人の従業員が集団脱北し、第三国を経由して韓国に亡命したというものだ。ちょうど北朝鮮が核実験やミサイル実験を繰り返したことを受けて国連による制裁決議が相次いで出され、この寧波市の店舗も含めて各北朝鮮レストランの営業成績が苦しくなっていた時期に起きた事件だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

11月の完全失業率は2.6%で前月と同水準、有効求

ワールド

シリア、来年から新紙幣交換開始 物価高助長との懸念

ワールド

米、ナイジェリア北西部でイスラム過激派空爆 トラン

ワールド

ロシア、LNG増産目標達成を数年先送り 制裁が影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中