抗議のため幹部が相次いで辞任

こうした新オーナーのやり方に反発した複数の幹部がカイ編集長に続いて相次いで新聞社を去った。

マネージメント部門のスチュアート・ホワイト編集長、デジタル部のジャディ・デジョン部長、ウェッブ部のジェニー・レイド編集長、ビジネス部のブレンダン・オー・バリウニ部長、シニアジャーナリストのアナ・バリガさん、そしてCEOのマルクス・ホルムズ氏も同じく抗議のために辞任したという。

今回の騒動について、カンボジア・メディア研究センターのモエウン・ナリドゥ代表は「新オーナーによる編集権への介入はジャーナリズムの倫理を踏みにじるものである。独立した新聞社では編集の最終責任者は編集長であり、経営陣は編集に介入すべきではない」と批判した。

フン・セン政権の内務省は「新聞社内部の問題だ」とコメントを避けながらも「カンボジアの報道の自由は近隣国より格段に進んでいる」と主張している。この近隣国がどの国を示しているのかは不明だ。

選挙に向け独裁色、報道統制強める政権

カンボジアでは今回問題が起きたプノンペン・ポストと同じく独立系の新聞社「カンボジア・デイリー」が同様にフン・セン政権に是々非々の立場から報道を続け、「プノンペン・ポスト」紙といいライバル関係にあった。しかしその政権批判姿勢がフン・セン首相の逆鱗に触れ、2017年9月に支払い不能な巨額の税金を課す命令を受けた結果やむなく休刊に追い込まれている。

今年7月に総選挙を控えるカンボジアでは、2017年11月に最高裁がフン・セン首相の「政府転覆計画に関与している」との訴えを認めて最大野党の「カンボジア救国党」の解党を命じ、同党のケム・ソカ党首を反逆罪容疑で逮捕するなど、独裁色が強まっている。

プノンペン・ポストの編集長交代、主要幹部の辞任で「独立系新聞の最後の砦」といわれた同紙も今後はフン・セン政権に近い官製メディアに変質することは確実とみられており、カンボジアで独立系のメディアはこれで存在しなくなったといえる。

おりしも国際ジャーナリスト組織の「国境なき記者団」(本部パリ)が2018年4月に発表した2018年の世界報道自由度ランキングでカンボジアは、昨年から10位も順位を落とし180か国中142位に後退した。

カンボジアのメディア、記者、ジャーナリストが直面している「報道の自由の危機」は極めて深刻な状況といわざるを得ない。

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[執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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