最新記事
米中関係

トランプの仕掛けた貿易戦争、中国企業に長い影 おもちゃから幹細胞培養ロボまで

2018年5月14日(月)18時15分
ロイター


拡張計画の見直しも

影響を懸念しているのは北科生物だけではない。

中国の医療機器、衣料品、製造業、鉄鋼、印刷分野における企業幹部にインタビューしたところ、広い範囲で貿易戦争の脅威が広がっていることが裏付けられた。

すでに目に見える影響に直面し、米国からの受注減少を受けて他国向け輸出にシフトしたり、あるいは工場拡張計画を中止したりする企業が出ている一方で、残る企業も貿易戦争の脅威がもたらす先行き不透明感に頭を悩ませている。

中国国営メディアは4日、貿易戦争を回避する合意に達することは容易ではないと指摘。「もし失敗すれば、激しい関税合戦の幕が上がり、グローバル貿易は混乱に陥るだろう」と警鐘を鳴らした。

影響を受けるであろう企業には、中国東部の河北省滄州にある河北華洋鋼管も含まれる。貿易摩擦が強まる中で、石油、ガス、水などを輸送するための金属管を製造する同社では、ここ数カ月受注が途切れているという。通常は製造から顧客向け出荷までに3カ月かかる。

米国のバイヤーが、制裁措置が実際に発動された場合に追加的な輸入関税を払うことを憂慮している、と同社の営業担当マネジャー、スティーブン・ユー氏は同社の製造工場で語った。

「今年は米国事業を拡大する計画を立てていた」とユー氏は言う。また、新たな関税政策が発動されることを想定して、米国市場向けの計画の調整を同社が検討していると語った。

貿易戦争が生じても、米国バイヤーがどこかから金属管製品を購入する必要があることに変わりはない。関税を避けるために第三国の仲介業者に製品を販売し、その後米国向けに出荷する「積み替え」が増える可能性が高い、とユー氏は予想する。

南部都市の東莞では、東莞ワゴン集団が高級ブランド向けの金属アクセサリーや国際サッカー連盟(FIFA)公認パートナー企業として製造するサッカー関連商品の米国向け販売が不振に陥っている。だが、これは必ずしも米中貿易紛争とは関係していない。

「米国がワールドカップの出場権を得られなかったことで、予想される売上げは、われわれの試算よりも約60─70%低くなっている」と東莞ワゴンのペリー・チョウ副社長はロイターに述べた。

とはいえ、他の事業分野には貿易摩擦の打撃が及ぶだろうと同副社長は語った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中