最新記事

欧州

米国との貿易戦争回避に腐心のドイツ 黒字達成はEU内紛呼ぶ両刃の剣

2018年5月16日(水)08時06分

5月4日ドイツは欧州最大の対米輸出国であり、100万人以上の国内雇用が対米輸出に依存している。それだけにドイツは、欧州連合(EU)と米国による貿易戦争を回避しようと躍起になっている。写真はドイツのメルケル首相。3日撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

ドイツは欧州最大の対米輸出国であり、100万人以上の国内雇用が対米輸出に依存している。それだけにドイツは、欧州連合(EU)と米国による貿易戦争を回避しようと躍起になっている。

トランプ米大統領が決定を下したEUからの鉄鋼とアルミ二ウム製品に対する関税措置の発動期限である6月1日が迫る中で、ドイツ政府はEU加盟国に対し、ある程度柔軟な姿勢を示すよう、また米国と欧州双方に利益のある広範囲の貿易協定を推進するよう呼びかけている。

だがこれにより、フランスなど域内の盟邦との関係がギクシャクしている。ドイツとともに欧州統合における車の両輪を担うフランス政府は、ドイツの巨額貿易黒字に不快感を示しており、米国の関税導入に対してEUがより強硬な姿勢を取ることを望んでいる。

だが、ドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)のビングマン会長は、「そのような(強硬)姿勢では、貿易戦争に突入する危険が大きい」と、懸念を隠さない。

ドイツ国内で100万人以上の雇用が対米輸出に依存していることを示す在米ドイツ商工会議所のデータを念頭に、ビングマン会長は、対抗関税措置をちらつかせるEUの姿勢に警鐘を鳴らした。「そんな方法では、欧州が保護貿易主義者の理屈を支持する羽目に陥る」

欧州委員会は、欧州が輸出する64億ユーロ(約8350億円)に上る金属製品が米関税の対象とされる場合、ピーナッツバターやジーンズを含めた28億ユーロ相当の米国からの輸出品に関税をかけると警告した。

ドイツ政府は、工業製品を中心に幅広い製品にわたって関税を引き下げる協定を締結するという案を推進している。

「改めて交渉することは可能だ。ただし、すべての産業に対する関税について協議すべきだ」とドイツ政府高官は言う。

フランス政府当局者は、まず、鉄鋼・アルミ関税に関してEUを恒久的かつ無条件で対象外としなければならないと述べ、「それが他のすべての選択肢にとっての前提条件となる」と断言する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中