最新記事

欧州

イタリア、ポピュリズムと極右の連立協議大詰め 経済公約はEUと衝突必至

2018年5月15日(火)09時36分


財政赤字巡る攻防

連立協議に携わっている両党関係者の何人かは、選挙前の提案を一部だけ徐々に実行していくという、より現実的なやり方に結局は落ち着くとの見方を示した。支持者が失望すれば、双方が相手と妥協せざるを得なかったと言い訳するだろう。

それでもこうした政策と、これまでイタリア政府が表明してきた財政赤字と公的債務の削減が整合性を保てるかどうかは分からない。イタリア経済に減速の兆しが見えていることで、新政権の仕事は一層困難になる。

選挙前に五つ星運動と同盟はいずれも、イタリアの経済成長がずっと低迷し貧困が増大しているのはEUの財政ルールがあるからだと批判し、政権の座に就けばEUの意向など無視して歳出を拡大するという公約を掲げた。

足元ではそこまで強硬な姿勢は示しておらず、五つ星運動の幹部は11日、財政赤字を増やす場合はまずEUと協議すると語った。

現政権は、昨年2.4%だった財政赤字の対国内総生産(GDP)比を今年1.6%に、来年は0.8%に下げ、2020年に財政均衡を達成すると約束している。

ディマイオ氏は選挙直前になって、財政赤字の対GDP比をEUが設定した上限の3%よりも引き上げるというそれまでの方針を修正し、この比率を1.5%に保つと述べた。

ただディマイオ氏の考えは、依然として現政権が打ち出した財政均衡化とは異なる。同盟所属のアルベルト・バニャイ上院議員に至っては「財政均衡化目標はイタリア経済を破壊している」とにべもない。

同盟は財政赤字の対GDP比を今年2.8%、2020年に3%まで高めたいとしており、バニャイ氏はこの問題で五つ星運動との合意点を探す必要があると話す。

動揺しない市場

テネコ・インテリジェンスのウォルファンゴ・ピッコリ共同社長は、EU攻撃はイタリアの有権者に受けが良く、新政権にとって欧州委は恐れるに足らない、と指摘する。欧州委は任期が残り1年になり、イタリアの財政に対する監視を強化する以外何もできないからで、市場もこの問題を警戒していないという。

確かに一部の専門家が「悪夢のシナリオ」とみなした五つ星連合と同盟の連立協議が進展しても、これまでのところ市場の反応は非常に限られている。

イタリア国債とドイツ国債の利回りスプレッドは一時7週間ぶりの高水準を記録したものの11日には再び縮小し、制御不能の様相は見せていない。

政治リスクコンサルティング会社ポリシー・ソナーを率いるフランチェスコ・ガリエッティ氏は、両党がまとめた経済政策は「激辛料理」であるとはいえ、投資家はイタリアでようやく政権が樹立される事態を喜ばしく感じていると説明した。

(Gavin Jones記者)

[ローマ 13日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは145円前半に小幅高、中東緊張緩和

ワールド

米連邦職員の団体交渉権剥奪を阻止、地裁が大統領令の

ビジネス

フジ・メディアHD、株主総会で取締役選任の会社提案

ビジネス

焦点:超長期国債「消却案」、年末にかけ再浮上も 歳
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 4
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 9
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中