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宇宙から降ってくる600万ドルを捕まえる! スペースXの次の一手

2018年5月29日(火)17時50分
鳥嶋真也

フェアリング回収船。後ろに見える巨大な網でフェアリングを捕まえようとしている (C) Elon Musk/SpaceX

イーロン・マスク氏の宇宙企業「スペースX」。同社の「ファルコン9」ロケットは、機体の一部を再使用できるという特徴をもち、打ち上げ後にロケットが空から舞い降りる光景は、すっかりおなじみとなった。

同社はこれにより、ロケットの打ち上げコストを下げることを目指しているが、一部だけではその幅は小さい。そこでスペースXはさらに他の部品も、ゆくゆくはロケットすべてを再使用し、大幅なコストダウンを達成することを目論んでいる。

宇宙から降ってくる600万ドル

現在、ファルコン9が再使用に成功しているのは、第1段機体という部分。ロケットの下部にあり、打ち上げ時に噴射するロケットエンジンや推進剤(燃料)などを積んだ、いちばん大きな部品である。

スペースXによると、第1段を再使用することで、新たに製造する場合に比べてコストは約半分に抑えることができ、ロケット全体で見れば、約30%のコストダウンができるという。

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ファルコン9ロケットは、第1段機体を着陸させて回収し、再使用できる (C) SpaceX

しかし、究極的には打ち上げコストを現在の100分の1に引き下げることを目指す同社にとって、30%はまだまだ序の口。そこでスペースXは、「フェアリング」と呼ばれる別の部品の再使用にも目をつけている。

フェアリングはロケットの先端にあり、中の衛星を大気などから保護する役割をもっている。ロケットが大気のない高度にまで上昇すれば不要になるため、その時点で分離され、海などに落として捨てられる。

しかし、フェアリングは炭素繊維複合材料を使っているため高価で、600万ドル(約6億円)もする。

そして今年2月、マスク氏は「もし、空から600万ドルが降ってきたら、捕まえたいと思うだろう?」と語り、フェアリングの回収、再使用に挑むことを表明した。

ロケットの先端にあるのがフェアリング。宇宙空間で桃太郎の桃のように真っ二つに割れて落ちてくる (C) SpaceX


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宇宙から降下してきた、ロケットの「フェアリング」。スペースXはこれを回収し、再使用しようとしている (C) Elon Musk/SpaceX

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