最新記事

選挙

トルコ6月大統領選、エルドアン再選なるか? 通貨リラ急落が長い影

2018年5月25日(金)12時45分

5月23日、トルコは通貨リラが急落した影響で労働者階級の生活がひっ迫し、エルドアン大統領(写真)が再選を目指す6月の選挙に影を落としている。写真は20日、イスタンブールで撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer)

トルコは通貨リラが急落した影響で労働者階級の生活がひっ迫し、エルドアン氏が再選を目指す6月の大統領選に影を落としている。

外国人投資家の間ではインフレ圧力が高いにもかかわらず金利低下を目指すエルドアン氏の政策への不信感が強まり、リラは売りを浴びた。エルドアン氏が先週、大統領選後に金融政策への関与を強める考えを示すとリラは売りが加速。次々と過去最安値を更新し、年初来の下落率は約20%に達した。

23日には中央銀行が緊急利上げに踏み切ったが、市場関係者の間からはリラ相場の安定回復には不十分との声も出ている。

チャルシャンバ市場で衣料品を商うオズギュル・カミスさんは、リラ安のために5ドルのズボンの仕入れ値がわずか1日で23リラから24.5リラに上がったとこぼす。「大統領が政策判断を誤ったせいだ。今はまだましな方で、大統領選後はもっとひどくなるだろう」という。

エルドアン氏は15年間も政権の座にあり、トルコの急激な経済成長を主導した実績を持つが、近年は国内で強権的な姿勢を強めている。海外投資家からは一様に警戒感を持たれているが、国内でもカミス氏のようにこれまで中核的な支持基盤だった労働者層から課題を突き付けられる可能性がある。

与党寄りと目されている調査機関MAKが23日公表した調査結果によると、大統領選と同時に実施される総選挙は接戦となっており、エルドアン氏の公正発展党(AKP)と国家主義的な連立政党の支持率が50%となっている。

大統領選の予想はエルドアン氏の支持率が51.4%だが、7月に決戦投票が行われる展開になればエルドアン氏は野党候補などと厳しい戦いを強いられるだろう。

ただ、今でも熱心なエルドアン支持者は少なくない。こうした勢力は、リラは外国人投資家に狙い撃ちされているとの政府の見解をうのみにしている。

チャルシャンバ市場の店員のアーメトさんは「外国の勢力はエルドアン氏を引き下ろすためにドルを押し上げている。しかし誰もエルドアン氏を打ち負かすことはできない。最後までAKPを支持する」と話した。

トルコの景気サイクルがピークを迎えたとみられることから、エルドアン氏は先月、大統領選を1年以上も前倒しした。政策誌ターキー・アナリストの編集長のハリル・カラベリ氏は「今から1年後に起きると言われる景気後退期の真っただ中に大統領選が行われれば、状況は違っただろう」と述べ、エルドアン氏の勝利を予想した。

ワシントン・インスティテュートの研究員のソネル・チャアプタイ氏は「トルコでは国民の半分がエルドアン氏を憎み、もう半分は熱心に支持している」と話した。

(Ali Kucukgocmen記者、David Dolan記者)

[イスタンブール 23日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、鉄鋼関税50%に引き上げ表明 6月4日

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中