最新記事

中国の米国産大豆への追加関税 国内の消費者物価を押し上げ?

2018年4月6日(金)15時43分

4月4日、中国政府は米国が対中制裁の品目案を公表したことへの報復措置として、大豆や自動車など106品目の米製品に25%の追加関税を課すと発表した。写真は武漢のスーパーで売られる大豆。2014年4月撮影(2018年 ロイター)

中国政府は4日、米国が対中制裁の品目案を公表したことへの報復措置として、大豆や自動車など106品目の米製品に25%の追加関税を課すと発表した。しかし大豆は米国に代わる輸出国を見つけたり、他の農産物置き換えることが難しく、中国は国内企業にも痛みを強いることになりそうだ。

大豆は中国の対米報復制裁で最大の「武器」とみられている。対中輸出が落ち込めばアイオワ州など、トランプ米大統領を支持する農業生産の盛んな州を直撃するためだ。米国の昨年の中国向け大豆輸出は120億ドル相当で、対中農産物輸出では最大の品目。
中国は世界で取引される大豆の約60%を輸入し、主に家畜飼料用の大豆ミールに加工している。

キャピタル・エコノミクスのアジア首席エコノミストのマーク・ウィリアムズ氏は「米国を除くと、世界には中国の需要を満たすのに十分な大豆はない」と指摘。「中国が輸入への依存度を引き下げる場合、いくつか選択肢はあるが、国内でコスト増を回避しながら米国の農家に打撃を与える特効薬などない」と話す。

中国の昨年の大豆輸入は半分をブラジル産が占めたが、米国産も約3300万トンと約3分の1に達した。これだけの量を他の国からの輸入で穴埋めするのは容易ではない。

米農務省によると、世界第3位の大豆生産国であるアルゼンチンは干ばつに見舞われ、1017─18年度の輸出は700万トン弱と、過去10年で最も少ない。

ブラジル、米国、アルゼンチン以外の国からの輸入は約1700万トンで、生産国は限られる。

中国国内の大豆生産量は約1400万トンだが、主に食品向けだ。

専門家によると、中国には大豆の戦略備蓄を放出したり、家畜用飼料における大豆ミールの配合比率を変えるなど、国内で打つことができる対応策もある。

米国大豆輸出協会のアジア部長のポール・バーク氏は「中国が国家備蓄を放出するだろうとの見方がある。こうした政策に踏み切る可能性はあるが、中国の備蓄量は分からない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:流動する政界、高市氏と玉木氏の「極

ビジネス

サムスン電子、第3四半期は32%営業増益へ AI需

ワールド

即時利下げ必要ない、11月会合はデータ注視へ=豪中

ビジネス

複数の自動車大手巡り英で大規模裁判、排ガス試験で「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中