最新記事

事件

化学兵器禁止機関、神経剤襲撃事件巡りロシア提案の合同調査を否決

2018年4月5日(木)10時22分

4月4日、3月に英国で元ロシア情報機関員らが神経剤で襲撃された事件を巡り、オランダ・ハーグにある化学兵器禁止機関(OPCW)は、ロシアが提案した同国も含めた合同調査の可否について採決を実施、反対15、賛成6で否決された。写真はOPCWの捜査官が捜査後に使用済みの防護服をまとめる様子。英国ソールズベリーで3月に撮影(2018年 ロイター/Peter Nicholls)

3月に英国で元ロシア情報機関員らが神経剤で襲撃された事件を巡り、オランダ・ハーグにある化学兵器禁止機関(OPCW)は4日、ロシアが提案した同国も含めた合同調査の可否について採決を実施、反対15、賛成6で否決された。

OPCWはロシアの要請で執行理事会を臨時開催。3月4日に英南部ソールズベリーで起きた事件では、セルゲイ・スクリパリ氏とその娘が軍事級の神経剤で襲撃された。英国はロシアが関与したと断定し、多数のロシア外交官の国外追放を決定。米国など同盟各国も追随した。ロシアは関与を否定し、対抗措置として英外交官の追放を発表している。

執行理事会でロシアは、英国の要請を受けてOPCWが行っている独立調査に加われなかったことを理由に、新たな合同調査を提案。これについて英国は、責任逃れを狙った「邪悪な」試みでロシアによる情報隠匿の一環だと非難した。

関係筋はロイターに対し、ロシアの提案に賛同したのは中国、アゼルバイジャン、スーダン、アルジェリア、イランだったと明らかにした。米国と欧州各国は反対票を投じた。執行理事会を構成する41カ国のうち、この日の会合には38カ国が参加。棄権票は17票に上った。

ロシアのシュルギンOPCW代表は同国の提案が否決されたことを認めた。

1997年に発効した化学兵器禁止条約に基づき設立された国際機関であるOPCWは、ソールズベリーの事件現場から採取した神経剤のサンプルについて、検査結果を来週公表する見通し。

シュルギン代表は先に、サンプル検査へのロシアの協力が拒否された場合、検査結果を受け入れないと表明している。

これとは別にロシアは同日、国連安全保障理事会に対し、襲撃事件を協議するため5日に公開の会合を開催するよう要請した。ロシアのネベンジャ国連大使が明かした。

[ハーグ 4日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、来年の消費財下取りに89億ドル割り当て スマ

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大

ビジネス

中国製造業PMI、12月は9カ月ぶり節目回復 非製

ワールド

台湾は警戒態勢維持、中国船は撤収 前日まで大規模演
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中