最新記事

小売業

ウォルマート、医療保険会社とタッグ アマゾン対抗でスーパーを医療センター化

2018年4月3日(火)08時36分

3月31日、米小売大手ウォルマート・ストアーズが、医療保険ヒューマナとの関係強化について初期段階の協議に入ったと伝えられた。大手スーパーの医療センター化という、新たな領域に踏み込むことになりそうだ。写真はウォルマートのロゴ。サンパウロで2月撮影(2018年 ロイター/Paulo Whitaker)

米小売大手ウォルマート・ストアーズが、医療保険ヒューマナとの関係強化について初期段階の協議に入ったと伝えられた。大手スーパーの医療センター化という、新たな領域に踏み込むことになりそうだ。

電子商取大手アマゾン・ドット・コムに押されるウォルマートとしては、これをテコに全米4700カ所の実店舗での販売を増やす狙いもある。医療センター化すれば65歳以上の層の集客力向上が見込める。

サイズモア・キャピタル・マネジメントの創業者チャールズ・サイズモア氏は「最終目標は、より多くの客を店舗に呼び込んで医薬品を買ってもらい、ついでにほかの買い物も増やしてもらうことだ」と話す。ウォルマートが基本的な医療ケアその他のヘルスケア・サービスを「競争力のある価格」で提供できれば、客足が増える可能性があるという。

関係筋2人が3月29日、ロイターに明らかにしたところでは、ウォルマートは今月ヒューマナに関係強化を持ちかけて協議に入っており、ヒューマナの買収も選択肢に入っている。

連携が深まれば、ウォルマートはヒューマナの持つ患者名簿を利用したり、店舗内に診療所を設置することが可能になる。

小売りと医療保険の統合は今回が初めてではない。先に米ドラッグストア大手CVSヘルスは米医療保険大手エトナの買収で合意した。

アマゾンに対抗

マーケティング・コンサルタント会社ストラテジック・リソース・グループのバート・フリッキンジャー氏は、ヒューマナと組むことでウォルマートは「アマゾンを追い込み、CVSと(小売り大手)ターゲット連合、そしてCVSとエトナ連合に対抗し、凌駕するための手数が増える」と言う。

リーリンク・パートナーズのシニア医療アナリスト、アナ・グプテ氏によると、ヒューマナの顧客のうち処方箋薬給付を受けている高齢者は510万人、全面的な医療給付を受けている人は350万人に上る。

また、ヒューマナは既に、医師の診療所に併設する医薬品店を50店舗ほど保有しており、ウォルマートの不動産と医薬品店を活用してこのモデルをさらに広げることが可能だ。ウォルマートは「高齢者のワンストップ・ショップになり得る」(グプテ氏)。

データ分析

グローバルデータ・リーテイルのマネジングディレクター、ニール・ソーンダーズ氏によると、膨大な顧客データもウォルマート・ヒューマナ連合の魅力で「小売店の強みは顧客を知り抜いていることだ。食習慣やその他の消費パターンを知っており、これは保険の設定に非常に役立つ」という。

また専門家によると、特定の医療を受けていることが分かれば、それに合った商品やサービスを売ることで、顧客との関係を強めることも可能になる。

(Nandita Bose記者 Chris Prentice記者)

[31日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港GDP、第3四半期は前年比+3.8% 予想上回

ワールド

北朝鮮の金永南・前最高人民会議常任委員長が死去、9

ワールド

高市首相、来夏に成長戦略策定へ 「危機管理投資」が

ワールド

マクロスコープ:国会本格論戦へ、立憲は消費減税で攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中