最新記事

朝鮮半島

金正恩の心を映す、中国が描く半島非核化シナリオ

2018年4月27日(金)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

南北首脳会談においても、韓国の文在寅大統領は、韓国独自の北朝鮮に対する経済制裁を解除して、南北経済交流を促進させていくことだろう。

実は、4月23日にコラム<中国、北朝鮮を「中国式改革開放」へ誘導――「核凍結」の裏で>をアップした後に、中国外交部の報道官が「中国は、北朝鮮の経済発展の最大の後ろ盾になる」と言った情報を得た。追記で書こうかと思ったが、また書くチャンスもあるだろうと、その時は控えた。

中国のこの考え方は、おそらく金正恩とほぼ一致しており、それはまた実は韓国の文在寅大統領の考え方とも類似のものと考えられる。文在寅は日米よりも中朝の方を向いている。

その中朝、あれだけ6年間も首脳会談も行わないほど敵対してきた両国が、急激に接近したのは昨年末からのトランプ政権の対中強硬策への転換が影響しているのは確かだろうが、それ以上に4月12日のコラム<北朝鮮、中朝共同戦線で戦う――「紅い団結」が必要なのは誰か?>に書いたように社会主義国家の中で市場経済を推進する「特色ある社会主義思想」が一党支配を続けることへの正当性を習近平政権はより堅固にしたいものと考えられる。

金正恩自身が「中朝共同戦線で戦う」と言ったのだから、中国のシナリオは金正恩の心を映しているものと考えていいだろう。

南北首脳会談では

本日は南北首脳会談が開催される。

南北の朝鮮民族による政権は、最終的には4月3日のコラム<一国二制度「連邦制統一国家」朝鮮?――半島問題は朝鮮民族が解決する>に書いたような国家像を描いているかもしれない。

しかし、それはかなり先のことになり、当面は経済建設が優先され、朝鮮半島の非核化は、おおむねここに書いた中国のシナリオに沿って進んでいくだろうと思われる。

本日の南北首脳会談終了後に発表されるだろう南北共同宣言で、限られた表現の中での金正恩の意思表示を窺うことはできるだろうが、その心は、環球時報の社説が解説した内容に最も近いにちがいない。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中