最新記事

人権問題

マララ「最高に嬉しい」 銃撃後6年ぶりにパキスタンへ帰国

2018年4月3日(火)09時47分

3月31日、パキスタン北西部スワト渓谷にある故郷の町を訪れたマララさん(右)と家族ら(2018年 ロイター)

ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんは、武装勢力タリバンによる厳格なイスラム法解釈の恐怖の下で2年間暮らした記憶にもかかわらず、パキスタン北西部の風光明媚な故郷スワト渓谷を思い焦がれていたと語る。

女子教育の重要性を自身のブログで訴えたことで、2012年にタリバンに頭部を撃たれ重傷を負ったマララさんは、銃撃後初となる母国への帰郷を果たした。

20歳のマララさんは、パキスタンのイスラム的価値に反する考えを広めているとする国内の批判に反論する。「私は自分の宗教を誇りに思い、国を誇りに思っている」と、マララさんは30日、滞在先のイスラマバードのホテルでロイターに語った。

バラ模様のスカーフにゆったりしたチュニックとパンツ姿のマララさんは、母国に戻って非常に喜んでいると話した。身に着けた服は、英オックスフォード大で学ぶマララさんに、パキスタンの家族や友人が送り届けてくれたものの1つだという。

マララさんは翌31日、厳重な警備に守られながら、ヘリコプターでスワト渓谷にある子供時代の家を訪問した。

「パキスタンの全てが懐かしい。川や山はもちろん、自宅の周りの汚い通りやゴミ、友達や、学校生活について友達とおしゃべりしたこと、近所の人とけんかしとまでが懐かしい」

マララさんはこれまでにも帰国を望んでいたが、安全上の懸念に加え、学業やオックスフォード大の入学試験で手一杯だったという。マララさんは昨年同大に入学し、政治、哲学と経済を学んでいる。

ノーベル賞

マララさんが2014年、史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞するに至るまでの道のりは、彼女が9歳だった2007年に、タリバンの地方部隊が、イスラマバードから約250キロ離れたスワト渓谷にあるマララさんの街の支配権を握ったことから始まった。

イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン(TTP)」は、テレビや音楽、女子教育を禁止し、200あまりの学校を燃やした。1990年代にタリバンが隣国アフガニスタンの政権を担った際、ほぼ全ての公共の場から女性を締め出した例にならったものだった。

「私はいまも、全ての出来事を覚えている。夜寝るとき、次の日は生きていないのではないかと恐れたことから、もし学校に行けば、途中の道で誰かが酸攻撃を仕掛けてくるのではないかという恐怖まで」と、マララさんは話した。

マララさんの父親は、女子教育を行っていた学校の教師で、同校は2009年まで運営を続けた。

パキスタン政府がタリバンを掃討した2009年半ば以降、マララさんは、タリバン支配時代に英国放送協会(BBC)のウルドゥー語サービス向けに書き始めたブログや、彼女を写したドキュメンタリー「Class Dismissed (クラス解散)」を通じて、女子教育のシンボルとなった。

だがそれにより、マララさんは標的になった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、11月は前月比53%減 新規採用は低迷

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中