最新記事

性感染症

史上最悪の「スーパー淋病」にイギリス人男性が初感染、東南アジアで

2018年3月29日(木)17時38分
ベンジャミン・フィアナウ

新しい抗生物質を使うとすぐに耐性を獲得するという「賢い」淋菌 royaltystockphoto-iStock.

<抗生物質の効かない淋病が世界で急増。対応が追い付かず、制御不能になる恐れも>

東南アジアで女性と性行為をしたイギリス人男性が、既存の抗生物質が効かない史上最悪の「スーパー淋病」に感染していたことが明らかになった。

イングランド公衆衛生当局によれば、男性の症例は、淋病の治療に最も有効とされる2種類の抗生物質が効かなかった初めてのケース。英BBCニュースが報じた。男性はイギリス国内にもパートナーがいたが、淋菌に感染したのは今年初めに東南アジアで別の女性と性行為をした時、と当局はみている。

淋病の治療では、アジスロマイシンとセフトリアキソン、という2種類の抗生物質を併用する。だが今回はそれが効かなかった。淋病はイギリスで2番目に多い性感染症だ。

淋病は避妊具なしの性行為や、オーラルセックス、アナルセックスによって感染するほか、感染した相手の性器に触れただけでうつることもある。本人に自覚症状がなくても感染する恐れがある。主な症状としては、性器から黄緑色をした粘液状の膿が出たり、尿道炎などを発症して男性は排尿時、女性は月経時に痛みを感じたりする。治療しなければ重症化し、骨盤感染症や不妊になる恐れもある。

「淋病の治療に最も効果的とされてきた2種類の抗生物質や他のほとんどの抗生物質が効かなかった。これほど強い耐性を持つケースは初めてだ」、とイングランド公衆衛生当局の医師、グウェンダ・ヒューズはBBCニュースに語った。「代替手段での治療に万全を尽くし、感染拡大のリスクを最小限に抑えたい」

「淋菌は頭がいい」

男性は淋病に効き目が認められる最後の抗生物質を投与され、現在も治療中。医師たちは来月にかけて回復具合を見極めるつもりだ。さらに、スーパー淋病の感染拡大を未然に封じ込めるため、男性のセックス歴の調査も始めた。

WTO(世界貿易機関)が77カ国のデータをまとめた昨年の報告書によれば、既存の抗生物質が効かない淋菌は急増しており、淋病が制御不能になる恐れがあるという。

「淋病を引き起こす淋菌は特に頭がいい」と、WHOの生殖医療専門医テオドラ・ウィは昨年7月の声明で言った。「新種の抗生物質を投与するたびに、淋菌は新たな耐性を獲得する」

WHOによれば、淋病の感染者は毎年7800万人。コンドーム使用率の低下や都市化、人の往来の増加、抗生物質が効かず治療に失敗するなど、あらゆる要因で感染者数が増加した。WHOが管轄する東南アジア地域では、毎年1100万人以上が感染しているという。

(翻訳:河原里香)

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏のイラン合意状況整備に期待、軍事行動回避

ワールド

ロシア、米との経済協力分野選定 ウクライナ戦争後見

ワールド

NATO国防相会議、米長官は欠席 事務総長は防衛投

ワールド

トランプ関税、「ほぼ全額」を米国民が負担 NY連銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中