最新記事

米中関係

中国の「米国債カード」、トランプの貿易戦争を防ぐ切り札になるか

2018年3月26日(月)18時30分

3月26日、中国が「米国債カード」をちらつかせている。米通商法301条に基づく対中制裁への対抗措置として、購入減額に含みを持たせる作戦だ。北京で2016年撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

中国が「米国債カード」をちらつかせている。米通商法301条に基づく対中制裁への対抗措置として、購入減額に含みを持たせる作戦だ。米国債価格が急落すれば自らも損を被るため、大量売却はありえないとみられている。

しかし、米財政が悪化するなか、短期的な駆け引きの手段として使われる可能性もあるため、市場も気が気ではない。

海外のマネーに頼る米国債市場

中国が昨年12月時点で保有する米国債は1兆1849億ドル(約124兆円)と発行残高の約8%を占める。2位は日本で1兆0615億ドル。米国債の発行残高14兆4700億ドルのうち、外国政府の保有は4兆0300億ドルと29%近くに達する。


米国債市場は1500兆円を超える世界最大の市場であり、その器の大きさと流動性の高さから世界中のマネーを引き寄せている。米国は基軸通貨国であり、今のところ、ドルの需要に困ることはない。だが、経常赤字国でもあり、資金を海外から集めないとならないという構造的な「弱さ」も併せ持つ。

トランプ米大統領は22日、年間最大600億ドル相当の中国製品に追加関税を課すと発表した。ターゲットとなった中国は報復関税などに加え、その「弱点」を突いて対抗しようとしているようだ。

中国の崔天凱駐米大使は23日、米ブルームバーグ・テレビのインタビューで米国債の購入減額の可能性について「全ての選択肢を視野に入れている」と述べ、含みを持たせた。「減額についてであり、売却とは言っていないが、保有分の1割でも売り出せば、市場はパニックになるだろう」(エコノミスト)という。

市場では、中国が米国債を大量売却する可能性は低いとみられている。1)米国債を売って価格が下がれば、中国が保有する米国債に評価損が発生する、2)3兆ドルを超える巨大な外貨準備を運用できるマーケットは他にない、3)中国が買わなくても他国が買う(中国は外交手段を1つ失う)、というのが一般的な見方だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中