最新記事

朝鮮半島

日本外しを始めた北朝鮮──日朝首脳会談模索は最悪のタイミング

2018年3月23日(金)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

当時のニクソン政権は、ベトナム戦争の泥沼化と米ソ対立が激化する中、二期目の大統領選挙に勝つために、「中国」というカードを使った。電撃的な米中国交正常化への道を切り開いたとして、キッシンジャーはノーベル平和賞を授与されている。

拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』の第1章に書いたように、外交経験のないトランプはキッシンジャーのアドバイスを受け、キッシンジャーから多大な影響を受けていたようだ。

だからこれもまた何度も書いてきたように、トランプは「何なら金正恩とハンバーガーでも食べながらお喋りをしてもいい」と言ってきたわけだ。トランプには政権発足前からすでに「何なら金正恩と会っても構わない」という考え方があったことになる。それもキッシンジャー同様の「ノーベル平和賞」が頭をかすめていたことだろう。

トランプが実は、このような思考の素地を持っていたことを、安倍政権はもっと早くから気づいているべきだったのではないだろうか。

昨年7月31日付のコラム「北朝鮮電撃訪問以外にない――北の脅威から人類を守るために」に書いたが、安倍政権は、その時は聞く耳を持たなかったようだ。日本が先んじていれば、北東アジア情勢はかなり違っており、日本に圧倒的に有利に働いていたはずだ。しかし安倍政権には残念ながら、それが読めなかったようだ。読めていたとしても選択はしなかった。

北朝鮮は日本に巨額の戦後賠償を求める計算

中露は最初から対話路線しかなく、そこに韓国が対話路線を呼び掛けたので、金正恩が呼応し、結果、トランプも大統領中間選挙を見据えて急遽、対話に舵を切った。

何を言わなくても明らかなように、「対話路線」から取り残されたのは日本だけである。

昨年10月10日付のコラム<対北朝鮮「圧力一辺倒」は日本だけ?>で、あの当時のムードでは罵倒されるのを覚悟の上で、警告を出し続けた。

金正恩は、国際情勢と各国の指導者の心理を(案外)キッチリと計算し、ここに来て激しい日本批判戦略に出始めている。

少なからぬ日本のメディアが3月18日、北朝鮮の朝鮮中央通信が17日に日本政府を非難し、「『日米韓の連携』とか『緊密な協力』とか騒いできたが、返ってきたのは『日本の疎外』という深刻な懸念だけだ」と伝えたと報道した。圧力を強調する日本に対し、「平壌行きのチケットを永遠に買えなくなるかもしれない」、「手遅れになる前に、大勢に従うべき」と牽制したとのこと。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

印ITサービス大手が軒並み好業績、AI関連需要追い

ワールド

ボルトン元補佐官を起訴、機密情報保持で トランプ氏

ビジネス

米銀、アルゼンチン向け200億ドル融資巡り米財務省

ビジネス

米失業保険申請、先週は減少か JPモルガンとゴール
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 7
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 10
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中