最新記事

オリンピック

平昌五輪へ北朝鮮スキー場での南北合宿案、経済制裁に抵触の可能性

2018年1月24日(水)09時48分


スキー場とミサイル発射場

2013年に正恩氏がオープンした馬息嶺スキー場は、ホテルや水族館、ゴルフ場など高級リゾート開発が進行する元山の近郊にある。元山や葛麻空港は、近年大規模な火器演習やミサイル発射実験が数十件行われる、国防上重要な地域にある。

市場経済化が進み、資産を蓄えた北朝鮮国民が増えるなか、馬息嶺スキー場は、海外からの旅行客だけでなく、こうした自国の富裕層からも外貨を巻き上げる狙いがある。

正恩氏は建設現場を何度も視察し、建設を急ぐよう指示しており、「馬息嶺速度」という、新たなスローガンができたほどだった。

国営メディアはこのリゾート施設について、「国民を愛する指導者からの、生活水準向上のための贈り物」だと激賞した。

一方、韓国政府の元高官らは、スイスで教育を受けた独裁的指導者が、市民の窮乏を尻目に自らの豪華な生活スタイルを満たすため、数少ない国の資源を流用した象徴的な例だと、同リゾートを批判している。

国営の朝鮮中央通信(KCNA)は21日、北朝鮮が示す平昌五輪に向けた緊張緩和姿勢の動機を疑う韓国政治家やメディアを批判した。

「五輪の成功に向け、南北関係を改善しようという(北朝鮮の)誠意や真意に、疑う余地は全くない」とKCNAは述べた。

制裁の懸念

元山出身の脱北者Kang Eung Chan氏は2013年、このスキーリゾートで3日間の旅行に出かけたという。滞在費用は、食事とスキーのレンタル代を含め1日100ドル前後で、大半の北朝鮮人はもちろん、当時、中国顧客向けに半官半民の縫製工場を経営する裕福なビジネスマンだったKang氏にとってすら、高価すぎる休暇だった。

「全部米ドルで支払った。北朝鮮の水準からみれば、安くはない」と、Kang氏はロイターの取材に語った。

北朝鮮は公式なデータを公表していないが、専門家は、同国の平均賃金は月30─40ドルだとみている。

観光は、国連安全保障理事会の制裁が未だに及ばない数少ない外貨獲得手段の1つだ。

もし韓国側がリゾート施設の使用料金を支払ったり、高価なスキーのトレーニング機材を新たに提供したりすれば、国連制裁がらみで問題が発生する恐れがあると専門家は指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中