最新記事

エンターテインメント

映画関係者が興行収入をかけ契約交渉する見本市AFMとは?

2017年12月9日(土)12時40分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


AFMで90カ国に販売契約を結んだ韓国映画「神と共に」 人気ウェブトゥーン(ウェブマンガ)を原作に作られた作品で、ハ・ジョンウ、チュ・ジフン、チャ・テヒョン、マ・ドンソク、EXOのディオらが出演。롯데엔터테인먼트 / YouTube

韓国映画の動向はどうだったのだろうか。4DXなど海外に上映システムを普及させたり、CJグループのようにトルコ、ベトナムなど海外にもシネコンを精力的にチェーン展開するなど、日本以上にグローバル展開を目指す韓国映画界。AFMにも当然のごとく精力的に参加したようだ。制作会社では、CG/VFXなどのポストプロダクション会社やアニメーション会社10社が総計293社とのミーティングをおこない、計1.820万ドルの契約を成功させ話題となった。

また映画会社ではロッテシネマが、12月20日に韓国公開が決まっているハ・ジョンウ主演の映画「神と共に(原題:신과함께)」をセールス。すでに釜山国際映画祭フィルムマーケットで「アジア地域では最高価格で販売された」と話題を呼んだ映画だが、引き続きAFMでも注目作品の1つとなった。死後、あの世に行った主人公が49日間に7つの地獄で審判を受けるという内容の作品で、釜山ではたった12分、AFMでも27分のダイジェスト映像だけの状態で、しかもパート1、2セットでの販売だったが、アジアをはじめ北米、ヨーロッパ各国合計90カ国での上映が決まった。

海外への販売から、海外での直接制作へ

今回、この「神と共に」の版権を販売したのは、韓国3大配給会社の1社であるロッテシネマだ。今までロッテショッピング部の傘下にあった映画コンテンツ、投資、配給部門が12月から映画事業部として分離される。今回の「神と共に」版権販売成功をもとに、今後も精力的に海外への作品販売を行っていくだろう。その他の2社はどのような海外展開を考えているのか見てみよう。

ショーボックスの戦略は、「直接投資」だ。現在ハリウッド映画「The Widow」をアメリカの制作社SKEと、「Forever Holiday in Bali」をインドネシアの韓国系制作社Sonamuと合作中である。その他中国との合作も控えている。

韓国映画会社トップのCJ E&Mは、2020年から海外で自社制作する映画を20作、10か国以上の言語で作ると今年9月に発表した。今まで行ってきた「完成した映画の海外輸出やリメイク権の販売」を海外ローカル映画の製作にシフトしていくことがグローバル進出の新しい方法だという。今回の「神と共に」のように、全ての映画が好調に販売されているわけではない。韓国特有の情緒が合わないという国も多いだろう。だったらその国に合わせて作ってしまえばよい、という発想は何とも韓国らしい。

観客動員1000万人越えを果たしたヒット作品もあったとはいえ、海外へのコンテンツは飽和状態といっていい。海外への販売はもとより、今後は海外との共同制作がどんどん増えていくきざしが伺える。すでに勢いのある中国、これから現地製作をベースに海外展開を見せる韓国。日本の映画界もいい意味で競い合いながら素晴らしい作品を1作でも多く海外に発表してほしい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中