最新記事

エンターテインメント

映画関係者が興行収入をかけ契約交渉する見本市AFMとは?

2017年12月9日(土)12時40分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

バラエティなど業界誌のバナーが彩りを添える会場のホテル  © The Independent Film & Television Alliance

<外国映画はどのように輸入され、日本映画はどのように海外に進出するのか? 映画の海外配給で大きな商談の場になっているAFMが今年も開催された>

早いもので2017年も残りわずかとなったが、映画の売買に関わる人たちの1年の締めくくりと言えば「AFM」である。AFMとは、American Film Market=アメリカン・フィルム・マーケットの略で、毎年東京国際映画祭の終わった頃、10月末〜11月の約8日間、アメリカのサンタモニカで開催される映画の見本市だ。開催期間の約1週間で10億円以上もの契約が交わされるといわれ、今年も、11月1日から8日まで映画関係者ら約7.415人が71カ国から集まり、2017年の締めくくりの売り上げと買い付けを賭けて、熱い取引が繰り広げられた。

とはいえAFMは映画関係者以外には広く知られているわけではない。カンヌ映画祭やベルリン映画祭などと比べるとニュースにもならず、この記事で初めて聞いたという人も少なくないだろう。しかし、映画配給関係者にとっては1年のメインイベントの1つと言っても過言ではなく、世界最大の映画見本市なのだ。

海外映画がどうやって輸入され日本国内で上映されるのか知っている人はどのくらいいるだろうか? 私の周囲の知人に尋ねてみても「海外でヒットした有名な映画は自動的に公開されるんでしょう?」「映画館が買っているんじゃないの?」と、映画バイヤーの存在自体知らない人が多かった。

メジャーと呼ばれるハリウッドの大手映画会社は自社や関連会社が世界各国に配給することが多いが、メジャー以外の会社や外国の映画などは、セラーと呼ばれる販売会社とバイヤー(買い付け)が交渉を行い権利を売買して輸入しているのだ。売り手は少しでも高く売り、買い手は少しでも安く買いたい。そこでミーティングを重ね売買の交渉が始まる。

もちろん、マーケット会場での公用語は英語。しかし、英語が流暢にしゃべれるからと言って交渉がうまくいくとは限らず、売り手と買い手の信頼関係や相性によって決まったり、タイミングやその映画にかける熱意などで売買が成立することも多い。というのも1度映画の権利を買ったらそれっきりではなく、その後7年(一般的には7年契約が多いが、交渉内容によって変わる)公開〜その後のレポート〜契約更新など、相手側担当者とは末永く付き合っていかなくてはならないからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計

ビジネス

成長型経済へ、26年度は物価上昇を適切に反映した予

ビジネス

次年度国債発行、30年債の優先減額求める声=財務省

ビジネス

韓国ネイバー傘下企業、国内最大の仮想通貨取引所を買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中